神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
第8章
…ここまで話し終えると、シュニィ・ルシェリートは衝撃の展開に目を見開いていた。
「どうして…いきなりそんなことに…?」
当然の疑問だね。
…正直なところ、それは僕の方が聞きたいよ。
でも、あのとき…僕とスクルトの身に何が起きたのか、ある程度推察することは出来る。
「スクルトが僕を許してくれたものだから、僕は勝手に、自分の罪そのものから許された気になっていた。…その報いを受けたんだよ」
スクルトは僕を許してくれた。
でも、冥界の同胞達は、運命の神様は、僕を許してはくれなかった。
それどころか、勝手に許された気になって贖罪の気持ちを忘れてしまった僕に、天誅を下すかのように。
…僕のこの手で、スクルトを殺させたのだ。
「…自分でもほとんど無意識だった。前触れなく、突然身体が燃えるように熱くなって…」
人間に『変化』していることが出来なくなった。
何かの衝動に突き動かされるかのように、獣の姿に『変化』した。
そして、突然の豹変に狼狽え、逃げる暇も余裕もなかったスクルトに襲い掛かり…。
「…気がついたら、彼女の胴体が繋がってなかった」
僕の…ケルベロスの爪に引き裂かれた、無惨な姿に変わっていた。
僕が正気に戻ったときには、スクルトは既に息絶えていた。
あの傷の深さじゃ、恐らく即死だっただろう。
誰がどう見ても、彼女はもう手遅れだった。
どうすることも出来なかった。
僕は自分の身に何が起きたのか、スクルトの身に何が起きたのか分からなかった。
ただ、背筋が凍るほどの恐怖を感じていた。
自分の意志で豹変した訳じゃなかった。それだけは分かっていた。
でも同時に、スクルトを引き裂いたのもまた自分であることも分かっていた。
僕が殺したのだ。理由は分からないけど。
突然身体が熱くなって、頭の中が湧き立って、本能に突き動かされるままにスクルトを引き裂いた。
身体の中の魔力が暴走して、歯止めが効かなかった。
「…気がついたら、彼女は僕に殺されて死んでいた」
「…何故…?」
と、シュニィ・ルシェリートは尋ねた。
何故なんだろうね。
その理由は、僕にも推し量ることしか出来ない。
誰も答えをくれるほど、優しくはないから。
「スクルトが許して、僕が自分を許しても。それでも僕は許されなかったんだよ」
結局のところ、理由はそれだけだろう。
「どんな気休めを口にしても、僕は結局獣だった。バケモノだったんだ。神は、僕が贖罪を忘れることを許さなかった」
そんな僕に罰を与える為に、僕の手でスクルトを殺させたのだ。
「どうやら僕は、人間の傍に長くは居られないらしい」
スクルトに出会う前は、ずっと一人で生きてきた。
一人で生きている間は、あんな風に豹変したことはなかった。
だけど、スクルトをこの手で引き裂いてしまってから、ようやく気づいた。
僕にかけられた呪いは、この禍々しい異形の姿だけではなかったのだ。
「どうして…いきなりそんなことに…?」
当然の疑問だね。
…正直なところ、それは僕の方が聞きたいよ。
でも、あのとき…僕とスクルトの身に何が起きたのか、ある程度推察することは出来る。
「スクルトが僕を許してくれたものだから、僕は勝手に、自分の罪そのものから許された気になっていた。…その報いを受けたんだよ」
スクルトは僕を許してくれた。
でも、冥界の同胞達は、運命の神様は、僕を許してはくれなかった。
それどころか、勝手に許された気になって贖罪の気持ちを忘れてしまった僕に、天誅を下すかのように。
…僕のこの手で、スクルトを殺させたのだ。
「…自分でもほとんど無意識だった。前触れなく、突然身体が燃えるように熱くなって…」
人間に『変化』していることが出来なくなった。
何かの衝動に突き動かされるかのように、獣の姿に『変化』した。
そして、突然の豹変に狼狽え、逃げる暇も余裕もなかったスクルトに襲い掛かり…。
「…気がついたら、彼女の胴体が繋がってなかった」
僕の…ケルベロスの爪に引き裂かれた、無惨な姿に変わっていた。
僕が正気に戻ったときには、スクルトは既に息絶えていた。
あの傷の深さじゃ、恐らく即死だっただろう。
誰がどう見ても、彼女はもう手遅れだった。
どうすることも出来なかった。
僕は自分の身に何が起きたのか、スクルトの身に何が起きたのか分からなかった。
ただ、背筋が凍るほどの恐怖を感じていた。
自分の意志で豹変した訳じゃなかった。それだけは分かっていた。
でも同時に、スクルトを引き裂いたのもまた自分であることも分かっていた。
僕が殺したのだ。理由は分からないけど。
突然身体が熱くなって、頭の中が湧き立って、本能に突き動かされるままにスクルトを引き裂いた。
身体の中の魔力が暴走して、歯止めが効かなかった。
「…気がついたら、彼女は僕に殺されて死んでいた」
「…何故…?」
と、シュニィ・ルシェリートは尋ねた。
何故なんだろうね。
その理由は、僕にも推し量ることしか出来ない。
誰も答えをくれるほど、優しくはないから。
「スクルトが許して、僕が自分を許しても。それでも僕は許されなかったんだよ」
結局のところ、理由はそれだけだろう。
「どんな気休めを口にしても、僕は結局獣だった。バケモノだったんだ。神は、僕が贖罪を忘れることを許さなかった」
そんな僕に罰を与える為に、僕の手でスクルトを殺させたのだ。
「どうやら僕は、人間の傍に長くは居られないらしい」
スクルトに出会う前は、ずっと一人で生きてきた。
一人で生きている間は、あんな風に豹変したことはなかった。
だけど、スクルトをこの手で引き裂いてしまってから、ようやく気づいた。
僕にかけられた呪いは、この禍々しい異形の姿だけではなかったのだ。