神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
僕が贖罪を忘れ、己の罪を忘れ、許された気になることを許さない。
愛する人を作り、居場所を作ることを許さない。
僕は自分の身の程も知らず、生意気にもスクルトという居場所を作ってしまった。
そのせいで、天誅が下ったのだ。
他でもないこの手で、スクルトを殺してしまった…。
…。
…幸せな、未来なんて。
僕達にはなかったのだ。何処にも。
それどころか僕はやはり、天下の何処にも居場所なんてない。
居心地の良い居場所なんて作ろうものなら、また天誅が下り、魔力が暴走してしまう。
その結果、僕は自分の居場所を自分で壊してしまうのだ。
お前のその罪を、脳裏に焼き付けろと言わんばかりに。
…スクルトをこの手で殺してしまってから、よく分かった。
「僕は幸福になることを許されない。居場所を持つことを許されない。そんな幸福は、バケモノのこの手には余るんだ」
だからこそ、他ならぬこの手で破壊することを強要されるのだ。
僕が決して、己の罪を忘れないように。
もっと早く、このことに気づけば良かった。
スクルトを殺してしまう前に、もっと早く気づけば良かったのに。
「可哀想なスクルト。こんなバケモノに殺されて。僕なんかと出会わなければ、彼女は死なずに済んだのに」
僕と出会ってしまったせいで、僕の隣に居たせいで、殺される羽目になった。
怖かっただろうに。痛かっただろうに。
さぞや無念だったろうに。
「スクルトの顔は、深い憎しみと怒りに染まっていた。…僕を恨んで死んでいったんだ」
「…」
「僕なんかと一緒にいなければ良かったって、そう思いながら…」
あんな思いをするくらいなら。
この世で一番大切な人を、自分の手にかけるくらいなら。
…ずっと孤独なまま、誰からも石を投げられ、唾を吐きかけられて生きるべきだった。
そうすれば、誰も死なずに済んだ。
…僕だってそうだ。
最初から、愛なんて、居場所なんて知らなければ。
この世にあれほど、心安らぐ場所があるなんて知らなければ。
…それらを全て失った後、胸を灼くほどの絶望感に襲われずに済んだのに。
「…だから、僕は絶対に幸せになっちゃいけない。バケモノにそんな権利はないんだ」
いずれ自分の手で壊してしまう幸福なら、いっそ最初から、不幸を押し付けられていた方がマシだ。
自分の意志で生きるなんてとんでもない。
獣は大人しく、鎖に繋げられ、鞭で打たれるべき。
だからこそ僕は、アーリヤット皇国の皇王に、顎で使われる立場に甘んじているのだ。
…もう決して、二度と、身に余る幸福なんて望まずに生きられるように。
愛する人を作り、居場所を作ることを許さない。
僕は自分の身の程も知らず、生意気にもスクルトという居場所を作ってしまった。
そのせいで、天誅が下ったのだ。
他でもないこの手で、スクルトを殺してしまった…。
…。
…幸せな、未来なんて。
僕達にはなかったのだ。何処にも。
それどころか僕はやはり、天下の何処にも居場所なんてない。
居心地の良い居場所なんて作ろうものなら、また天誅が下り、魔力が暴走してしまう。
その結果、僕は自分の居場所を自分で壊してしまうのだ。
お前のその罪を、脳裏に焼き付けろと言わんばかりに。
…スクルトをこの手で殺してしまってから、よく分かった。
「僕は幸福になることを許されない。居場所を持つことを許されない。そんな幸福は、バケモノのこの手には余るんだ」
だからこそ、他ならぬこの手で破壊することを強要されるのだ。
僕が決して、己の罪を忘れないように。
もっと早く、このことに気づけば良かった。
スクルトを殺してしまう前に、もっと早く気づけば良かったのに。
「可哀想なスクルト。こんなバケモノに殺されて。僕なんかと出会わなければ、彼女は死なずに済んだのに」
僕と出会ってしまったせいで、僕の隣に居たせいで、殺される羽目になった。
怖かっただろうに。痛かっただろうに。
さぞや無念だったろうに。
「スクルトの顔は、深い憎しみと怒りに染まっていた。…僕を恨んで死んでいったんだ」
「…」
「僕なんかと一緒にいなければ良かったって、そう思いながら…」
あんな思いをするくらいなら。
この世で一番大切な人を、自分の手にかけるくらいなら。
…ずっと孤独なまま、誰からも石を投げられ、唾を吐きかけられて生きるべきだった。
そうすれば、誰も死なずに済んだ。
…僕だってそうだ。
最初から、愛なんて、居場所なんて知らなければ。
この世にあれほど、心安らぐ場所があるなんて知らなければ。
…それらを全て失った後、胸を灼くほどの絶望感に襲われずに済んだのに。
「…だから、僕は絶対に幸せになっちゃいけない。バケモノにそんな権利はないんだ」
いずれ自分の手で壊してしまう幸福なら、いっそ最初から、不幸を押し付けられていた方がマシだ。
自分の意志で生きるなんてとんでもない。
獣は大人しく、鎖に繋げられ、鞭で打たれるべき。
だからこそ僕は、アーリヤット皇国の皇王に、顎で使われる立場に甘んじているのだ。
…もう決して、二度と、身に余る幸福なんて望まずに生きられるように。