神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
――――――…マシュリさんに打ち明けられた、彼の過去のお話。
マシュリさんと…スクルトさんのお話を聞いて。
私はそのあまりの悲しさに、涙が止まらなかった。
マシュリさんが何を悪いことをしたと言うのでしょうか。
彼は何も悪くないのに、その身に余るほどの苦しみを背負わされて…。
愛する人を、他でもない自分の手で殺させるなんて…。
何故なんですか。
人を愛することは、そんなに悪いことですか?
マシュリさんがあまりにも気の毒で、可哀想で…。
何とか彼に分かってもらいたい。恐ろしいほどの絶望感や罪悪感に襲われている彼に。
それでも、自分の生きるこの世界を信じて欲しいと。
下手な慰めなど、マシュリさんにとっては無意味だということは分かっていた。
彼の経験してきた苦しみが、あまりに大きくて。
私が何を言っても、私ごときの薄っぺらな言葉では、マシュリさんの心には響かないだろう。
彼に何を言うべきか、考えて、考えて…。
思いついたのは、マシュリさんではなく…彼を愛していたであろう、スクルトさんのことだった。
スクルトさんも辛かったでしょうね。
遺されるマシュリさん以上に、彼女もまた辛かっただろうと思った。
これがもし自分だったら、愛する人と死に別れたのが自分だったらと考えて。
そして、思ったのだ。
果たしてスクルトさんは、本当にマシュリさんを恨んで死んだのだろうか、と。
だって、それじゃおかしくありませんか?
「一体…何のこと…?」
「スクルトさんのことです…。彼女は本当にあなたを憎んでいたんでしょうか」
「…」
突然意表を突いた質問をされて、マシュリさんは狼狽えていた。
それとも私に指摘されて、思い出したのでしょうか。
スクルトさんの、無惨な最期の姿を。
思い出させてしまったのなら、申し訳ないです。
でも、今一度思い出して欲しい。
だって…もし、私がスクルトさんの立場だったら…。
「スクルトさんは、あなたを恨んで亡くなったんですか…?」
「…そうだって言ってるだろ。信じていた相手に突然殺されたんだから…。憎んでるに決まってる」
マシュリさんは、苦しそうに唇を噛み締めてそう言った。
…。
…本当に、そうなんですか?
「…よく思い出してください、マシュリさん」
「…さっきから何なんだ?何回思い出したって、過去が変わる訳じゃない」
「そうですね。今更私達が何を言っても、起きてしまった事実は変わらない…」
スクルトさんはマシュリさんの手で殺されてしまった。
この事実に変わりはないでしょう。
でも、今一度思い出して欲しい。
マシュリさんの説明では、腑に落ちないことがある。
「…だけど、スクルトさんには未来が見えたんですよね?」
スクルトさんは、未来視の能力を持っていた。
「それなら、自分がマシュリさんに殺される運命だったことを知っていたのでは…?」
「…それは…」
と、マシュリさんは戸惑ったように口ごもった。
やっぱり。
マシュリさんは、自分の罪の深さに溺れてしまっている。
そのせいで、自罰的な思い込みをしているように見えるのだ。
マシュリさんと…スクルトさんのお話を聞いて。
私はそのあまりの悲しさに、涙が止まらなかった。
マシュリさんが何を悪いことをしたと言うのでしょうか。
彼は何も悪くないのに、その身に余るほどの苦しみを背負わされて…。
愛する人を、他でもない自分の手で殺させるなんて…。
何故なんですか。
人を愛することは、そんなに悪いことですか?
マシュリさんがあまりにも気の毒で、可哀想で…。
何とか彼に分かってもらいたい。恐ろしいほどの絶望感や罪悪感に襲われている彼に。
それでも、自分の生きるこの世界を信じて欲しいと。
下手な慰めなど、マシュリさんにとっては無意味だということは分かっていた。
彼の経験してきた苦しみが、あまりに大きくて。
私が何を言っても、私ごときの薄っぺらな言葉では、マシュリさんの心には響かないだろう。
彼に何を言うべきか、考えて、考えて…。
思いついたのは、マシュリさんではなく…彼を愛していたであろう、スクルトさんのことだった。
スクルトさんも辛かったでしょうね。
遺されるマシュリさん以上に、彼女もまた辛かっただろうと思った。
これがもし自分だったら、愛する人と死に別れたのが自分だったらと考えて。
そして、思ったのだ。
果たしてスクルトさんは、本当にマシュリさんを恨んで死んだのだろうか、と。
だって、それじゃおかしくありませんか?
「一体…何のこと…?」
「スクルトさんのことです…。彼女は本当にあなたを憎んでいたんでしょうか」
「…」
突然意表を突いた質問をされて、マシュリさんは狼狽えていた。
それとも私に指摘されて、思い出したのでしょうか。
スクルトさんの、無惨な最期の姿を。
思い出させてしまったのなら、申し訳ないです。
でも、今一度思い出して欲しい。
だって…もし、私がスクルトさんの立場だったら…。
「スクルトさんは、あなたを恨んで亡くなったんですか…?」
「…そうだって言ってるだろ。信じていた相手に突然殺されたんだから…。憎んでるに決まってる」
マシュリさんは、苦しそうに唇を噛み締めてそう言った。
…。
…本当に、そうなんですか?
「…よく思い出してください、マシュリさん」
「…さっきから何なんだ?何回思い出したって、過去が変わる訳じゃない」
「そうですね。今更私達が何を言っても、起きてしまった事実は変わらない…」
スクルトさんはマシュリさんの手で殺されてしまった。
この事実に変わりはないでしょう。
でも、今一度思い出して欲しい。
マシュリさんの説明では、腑に落ちないことがある。
「…だけど、スクルトさんには未来が見えたんですよね?」
スクルトさんは、未来視の能力を持っていた。
「それなら、自分がマシュリさんに殺される運命だったことを知っていたのでは…?」
「…それは…」
と、マシュリさんは戸惑ったように口ごもった。
やっぱり。
マシュリさんは、自分の罪の深さに溺れてしまっている。
そのせいで、自罰的な思い込みをしているように見えるのだ。