神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「拾ったのは私達なんだから、無責任に放り出すことは出来ないよ」

「うん、そうだよ。そんな可哀想なこと出来ないよ…」

…可哀想かなぁ?これが?

保健所に連れていくという選択肢だってあるのに、それは論外なんだろうなー。

「飼い猫にしては、飼い主の影も形も見えないみたいだけど」

俺は連日、猫缶を買う為に街に出てるけど。

迷い猫探してます、の貼り紙の一枚も見かけない。

飼い主なんてそもそもいないのか、それとも、いなくなったからって熱心に探すつもりはないのか…。

いずれにしても、この猫の実家に結びつくような目ぼしい情報は全くない。

「放り出すことは出来ない。飼い主を探すことも出来ない…」

…となると、考えられる選択肢は…もう一つしかないね。

「…ここは覚悟を決めるときじゃないかな、ツキナ」

俺はツキナに向かってそう言った。

「すぐり君…覚悟って…」

それは決まってるよ。

子供達だけでどーにも出来ないことなら、大人に頼るしかないでしょ?

これが俺と『八千代』の問題だったら、二人だけで何とかするんだけどなー。

今回はツキナの他に、6人の女子生徒が絡んでいる。

ツキナはともかく、この女の子達の責任まで背負うつもりはないよ。俺は。

それに、ほら。

俺個人としては、この猫がどーなってもどーでも良いつもりだからさぁ。

ただ、この猫に何かあったらツキナが悲しむだろうから。

ツキナの笑顔を守る為に協力してるだけだよ。俺は。

「学院長せんせー達に、直訴しに行こう。この猫、学院で飼わせてくださいってね」
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