神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「僕も、もう一度リリスによく聞いてみます」

ナジュがそう言った。

そうしてくれると助かる。非常に助かる。

「そうだな。…教えてくれると良いんだが」

「リリスって結構心配性ですからね。僕に危険が迫ってると思ったら、テコでも聞かなくて」

お前と似てんじゃね?

「僕は素直な良い子ですよ?」

あー、はいはい。そういうのは良いから。

「じゃあ、リリスに言ってやってくれ」

「何を?」

「例えナジュに危険が迫ってても、俺達がいるから大丈夫だって。ナジュを傷つけせない為にも、知ってることがあるなら教えてくれってな」

ナジュをダシに使うようで、申し訳ないが。

しかし、そうでも言わなきゃ、リリスも喋る気にならないだろうから。

それに、これは嘘ではない。 

ナジュに危険が迫ってるってことは、俺達に危険が迫ってるのと同じだ。

守るに決まってるだろ。当たり前だ。

「…分かりました。伝えておきます」

「おぉ、よろしく」

今のところ、リリスが一番有益な情報を持っているようだから。

少しでも何か教えてくれるなら有り難い。

あとは…俺達も調べてみるかな。

「ジュリスと…それから吐月にも話して、協力を求めるべきだろうな」

「そうだね。すぐに行ってみよう」

…それから。

「イレース達にはいつ話す?」

調べ物をするなら、人手は多いに越したことはないが…。

この場にいないメンバーには、いつ、どう伝えるべきか…。

「…シュニィちゃんを攫った魔物の正体が分からない以上、もう少し隠しておいた方が良いんじゃないかな?」

という、シルナの意見である。

そうだな…。

逆に正体が分からないこそ、イレース達にも話して、注意を呼び掛けた方が良いのではないか…とも思うな。

…どっちが良いんだろう。

「いずれにしても、いつまでも黙ってはおけないぞ」

自分達に隠れて俺達がコソコソしてるのを見たら、何かあったと気づくだろう。

特に、元暗殺者組の二人な。

大人より勘が鋭い奴らだから、いくら俺達が隠れて事を進めようとしても。

何かあったと瞬時に察知して、必ず首を突っ込もうとするだろう。

本当、あいつらどうやって撃退したら良いんだ?

「大丈夫ですよ。僕だって、そんなに長く隠せるとは思ってませんし、そんなつもりもありませんから」

と、ナジュ。

「先に学院長達に話しておきたかっただけです。今夜、またリリスに事情を聞いて…。明日にでも、イレースさん達とも共有しましょう」

「…分かった」

それじゃ、明日までに俺とシルナも、調べられることは調べておこう。

…何か有益な情報を見つけられれば良いのだが…。
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