神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「いや、悪かったと思ってますよ。本当に…」
「…全くナジュ君はこれだから…」
ぶつぶつ。
「…嫌いになりました?」
うん嫌い、って言われたら僕は泣きますけど。
しかし、僕とリリスの絆は固い。
「なる訳ないでしょ。そのくらいで」
良かった。
「僕もリリスが何をしても、いつまでもずっと大好きですよ」
「あぁもう、そういうことを平気で言うから、君って人は…」
「戦わないでと仰るってことは、そんなにヤバい相手なんですか?」
その、シュニィさんを拉致した犯人って言うのは。
魔物が実行犯ってことは、裏で手を引いてるのはその契約者である召喚魔導師。
更に、その召喚魔導師に指示を出したのは、ルディシアさんをこの国に派遣した、例のアーリヤット皇王だと推測している。
果たして、事はそんなに単純なのだろうか?
「ヤバい相手…。…うん、ヤバい相手だよ」
へぇ。それは面白そう。
「どんな相手なんですか?ツノでも生えてるんですか」
「ツノ…生えてる」
生えてるんですか。
適当に言ったつもりだったのに。
「良い?ナジュ君、よく聞いて」
「はい」
リリスの話ですからね。心して聞きますよ。
「私がナジュ君に『戦わないで』って言ってるのは、勿論ナジュ君を守る為でもあるけど、それだけじゃない。…君の仲間達を守る為でもあるんだよ」
…ほう。
それはつまり、シルナ学院長とか、羽久さんとか、天音さんとか…。
あと、聖魔騎士団の皆さんのことですかね。
僕の守るもの、随分増えましたね。
かつては、自分の生命を含め、失っても痛くも痒くもないものしか持っていなかったはずなんだが。
リリス以外は、ですけどね。
「『アレ』と下手に事を構えるくらいなら…シュニィちゃんのことは諦めた方が良い」
そこまで言いますか。
アトラスさんが聞いたら、大激怒不可避ですね。
あの人の辞書に、「諦める」という言葉は載ってなさそうですし。
「学院長や羽久さん達が、守ってもらわなきゃいけないほどひ弱じゃないってことは、リリスも知ってますよね」
イーニシュフェルト魔導学院の教師陣、元『終日組』暗殺者の二人。
それから、聖魔騎士団魔導部隊大隊長の皆さん。
いずれも、僕に守ってもらう必要などない。
むしろ僕が守って欲しいくらい、国内でも指折りの実力をお持ちである。
特に学院長。
あの人で勝てないなら、多分誰が相手でも無理ですよ。
しかし、リリスは。
「知ってる。でも彼らは人間だから」
「…」
「人間相手なら負けないと思う。でも、今回の相手は…人間じゃない。冥界の魔物なんだよ」
…やっぱり魔物なんですね。
「人間と魔物が戦ったら、明らかに人間の方が分が悪いよ」
「でも学院長達はこれまで、何人も召喚魔導師を相手にしてきた経験があるはずですよ」
聖魔騎士団魔導部隊の中にも、召喚魔導師の人がいたじゃないですか。
吐月さんって人。あの人も、学院長の教え子の一人でしょう?
今更あの学院長が、召喚魔導師くらい程度に恐れを為すとは思えませんが。
「違うの、ナジュ君。そういうことじゃないの」
リリスは首を振ってそう言った。
「じゃあどういうことですか?」
「あれは…あれは召喚魔導師と契約した魔物なんかじゃない。罪を犯して、道を外れて、群れを追い出された…」
「…リリス…?」
「…あれは罪の獣。しかも…あの子は私の…」
「…」
リリスはその夜、僕に全てを教えてくれた。
シュニィさんを誘拐した犯人の正体を。
「…全くナジュ君はこれだから…」
ぶつぶつ。
「…嫌いになりました?」
うん嫌い、って言われたら僕は泣きますけど。
しかし、僕とリリスの絆は固い。
「なる訳ないでしょ。そのくらいで」
良かった。
「僕もリリスが何をしても、いつまでもずっと大好きですよ」
「あぁもう、そういうことを平気で言うから、君って人は…」
「戦わないでと仰るってことは、そんなにヤバい相手なんですか?」
その、シュニィさんを拉致した犯人って言うのは。
魔物が実行犯ってことは、裏で手を引いてるのはその契約者である召喚魔導師。
更に、その召喚魔導師に指示を出したのは、ルディシアさんをこの国に派遣した、例のアーリヤット皇王だと推測している。
果たして、事はそんなに単純なのだろうか?
「ヤバい相手…。…うん、ヤバい相手だよ」
へぇ。それは面白そう。
「どんな相手なんですか?ツノでも生えてるんですか」
「ツノ…生えてる」
生えてるんですか。
適当に言ったつもりだったのに。
「良い?ナジュ君、よく聞いて」
「はい」
リリスの話ですからね。心して聞きますよ。
「私がナジュ君に『戦わないで』って言ってるのは、勿論ナジュ君を守る為でもあるけど、それだけじゃない。…君の仲間達を守る為でもあるんだよ」
…ほう。
それはつまり、シルナ学院長とか、羽久さんとか、天音さんとか…。
あと、聖魔騎士団の皆さんのことですかね。
僕の守るもの、随分増えましたね。
かつては、自分の生命を含め、失っても痛くも痒くもないものしか持っていなかったはずなんだが。
リリス以外は、ですけどね。
「『アレ』と下手に事を構えるくらいなら…シュニィちゃんのことは諦めた方が良い」
そこまで言いますか。
アトラスさんが聞いたら、大激怒不可避ですね。
あの人の辞書に、「諦める」という言葉は載ってなさそうですし。
「学院長や羽久さん達が、守ってもらわなきゃいけないほどひ弱じゃないってことは、リリスも知ってますよね」
イーニシュフェルト魔導学院の教師陣、元『終日組』暗殺者の二人。
それから、聖魔騎士団魔導部隊大隊長の皆さん。
いずれも、僕に守ってもらう必要などない。
むしろ僕が守って欲しいくらい、国内でも指折りの実力をお持ちである。
特に学院長。
あの人で勝てないなら、多分誰が相手でも無理ですよ。
しかし、リリスは。
「知ってる。でも彼らは人間だから」
「…」
「人間相手なら負けないと思う。でも、今回の相手は…人間じゃない。冥界の魔物なんだよ」
…やっぱり魔物なんですね。
「人間と魔物が戦ったら、明らかに人間の方が分が悪いよ」
「でも学院長達はこれまで、何人も召喚魔導師を相手にしてきた経験があるはずですよ」
聖魔騎士団魔導部隊の中にも、召喚魔導師の人がいたじゃないですか。
吐月さんって人。あの人も、学院長の教え子の一人でしょう?
今更あの学院長が、召喚魔導師くらい程度に恐れを為すとは思えませんが。
「違うの、ナジュ君。そういうことじゃないの」
リリスは首を振ってそう言った。
「じゃあどういうことですか?」
「あれは…あれは召喚魔導師と契約した魔物なんかじゃない。罪を犯して、道を外れて、群れを追い出された…」
「…リリス…?」
「…あれは罪の獣。しかも…あの子は私の…」
「…」
リリスはその夜、僕に全てを教えてくれた。
シュニィさんを誘拐した犯人の正体を。