神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「…そう。…そうだったんだ」

…今、ようやく。

ようやく届いたよ。君の言葉が。

これまでずっと…聞こえなかった振りをして…ごめん。

必死に伝えようとしてくれていたのに…。

認めるのが、受け入れるのが怖くて…一生懸命、目を逸らしてしまっていた。

…なんて馬鹿だったんだろう。

君は…僕に、輝かしい未来を託してくれていたんだ…。

「マシュリさん…」

「…ありがとう、シュニィ・ルシェリート。君のお陰で思い出したよ」

僕の大切な過去のこと。

そして、大切な未来のことも。

…そうと分かれば、もう言いなりのままではいられないね。

少なくともシュニィ・ルシェリートは、僕の恩人になった訳だから。

許してもらえるとは思ってないけど…。

「…君を解放するよ、シュニィ」

「…え?」

え、って何だ。

「ここから出して欲しくて、必死に僕を説得してたんじゃないの?」

だとしたら、説得は大成功だよ。

君には人の心を絆す才能があるね。

「それは…そうですけど、でも私はまず何より…マシュリさんの心を救いたくて…」

…呆れた。

自分を攫った誘拐犯の心を救いたいなんて、どんなお人好しだ。

…そのお陰で、僕は救われたんだけどね。

「…これ以上、逆らうつもりはないから」

すっかり戦意が削がれてしまって、誰とも戦う気にはなれない。

この人をこれ以上、僕の都合で閉じ込めておくことも。

「投降するよ。あとは煮るなり焼くなり、好きにしてくれれば良い」

これは本心だった。

どのような処分が下されようとも、甘んじて受けるつもりだった。

良くて国外追放、悪くて極刑だろうか?

…それなら、それでも構わない。

これ以上罪を重ねずに済むなら、今ここで人生が終わってしまっても構わない。
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