神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
第10章
…さて。

マシュリの滞在が無事に決まり。

俺達は、ひとまずイーニシュフェルト魔導学院に帰還した。

そして早速、学院で待っていたイレースや天音、令月とすぐりに事情を説明した。

シュニィが無事に見つかったこと。そして、マシュリが説得を受け入れてくれたことも。

「…ふん。相変わらず甘い男です」

シルナがマシュリを説得したときのことを話すと、イレースはこの反応だった。

呆れ顔だったが、それ以上とやかくは言わなかった。

イレースも分かってるんだろう。シルナがこういう奴だって。

「誰も怪我がなくて良かった…」

天音は、安心したようにそう言った。

そういえば、そうだな。

シュニィが10日ばかりも行方が分からなくなって、皆気を揉んでいたけど。

最終的には一人の怪我人も出ず、全て丸く収まっている。
 
約一名、アトラスに吹っ飛ばされて鼻血を出した男がいるが。

あれはまぁ、ノーカンということで。

ここ最近暗い話題ばかりだったけど、それらを返して余りある収穫だな。

誰も傷つかず、元気で戻ってきたんだから。

今頃シュニィはアトラスと共に、久し振りに自分の家に帰っていることだろう。

そして、可愛い二人の子供達を抱き締めているんだろうな。

存分に甘やかしてやってくれ。二人共、凄く良い子だったから。

特にアイナの方。

今日ばかりは家族水入らずで、幸せに過ごして欲しいものだ。

全部丸く収まって、一件落着だな。

すると、そこに。

「…ねぇ、一つ聞きたいことがあるんだけど」

令月とすぐりが、俺の横をじっと見つめていた。

「どうした?」

「その人さー、何でここにいるの?」

と、すぐりが指差して尋ねた。

すぐりの指差す先にいたのは。

ちょこんと学院長室のソファに腰掛けて、まったり寛いでるマシュリの姿であった。

…うん。

見間違いかなーと思ったけど、やっぱり見間違いじゃなかったようだ。
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