神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
実は俺も、令月やすぐりと全く同じ質問をしたいと思っていたところだ。

マシュリ、何でここにいんの?

いや、ルーデュニア聖王国に滞在するのは知ってるけど。

でも、当たり前のようにイーニシュフェルト魔導学院についてきたから、凄いびっくりした。

てっきり、聖魔騎士団の方で身柄を預かるのだとばかり…。

別に良いけどさ。学院に来てもらっても。

「でも、マシュリ…。お前は聖魔騎士団に居たがるんじゃないかと思ってたよ」

「?何で?」

「何でって…。シュニィのこと気に入ってるんだろ?」

だから、てっきりシュニィの近くにいるものだと思ってた。

多分シュニィの方も、そのつもりだったんじゃなかろうか。

…しかし。

ここで俺達は、衝撃の事実を知ることになる。

「うん、でも僕、ここも割と気に入ってるから」

…だって。

あ、そう…。まぁ良いけど。

「生徒に見られないに気をつけてくれよ。新しい先生が来た、とか言われたら困るし」

「そうだね。戻ってきたの久し振りだから」

…戻ってきた?

…って、何処に?

…マシュリが何言ってるのか、よく分からんが…。

「まぁまぁ、折角来てくれたんだから。歓迎するよマシュリ君。ウェルカムフード…ならぬ、ウェルカムガトーショコラは如何?」

誰が相手でも、とりあえず学院に来てくれた者にチョコ菓子を振る舞うのは、シルナの癖みたいなものだ。

「結構です」

断られてるけど。

あのなシルナ。何度も言ってるけど。

世の中の全ての人がお前のようにチョコが好きだと思ったら、それは大きな間違いだからな。

…さて、それはともかく。

こうしてシュニィが無事に戻ってきて、一件落着したからには。

これまで後回しにしていた問題を、いよいよ解決しないとな。

「シルナ、明日にでもまた聖魔騎士団に行って…エリュティアに頼もう」

「ほぇ?」

ほぇじゃねぇよ。

まさかこいつ、忘れたんじゃないだろうな?

我らがイーニシュフェルト魔導学院のマスコット、いろりと名付けられた銀色の毛並みの猫のことを。
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