神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
最初に猫を見つけた3人と、その後応援として駆けつけた4人、計7人の女子生徒達の手によって。
びしょ濡れだった猫は、ふわふわの毛並みを取り戻した。
「良かった。元気になったみたい」
「可愛いね。何処から迷い込んだんだろう?」
ホッと一息ついたのも束の間。
困ったのはその後であった。
「でも…この子、どうしよう?」
一人がそう尋ねると、他の6人は黙り込んだ。
さすがに、そこまでは考えていなかった。
彼女達はただ、目の前の小さな命を見過ごせなかっただけである。
「飼い猫なのかな…?」
「分かんない…。首輪はつけてないみたいだけど」
「じゃあ野良猫かな…。随分汚れてたみたいだし…」
と、憶測を重ねても何も解決しない。
まさか猫に直接尋ねる訳にもいかず。
「…それに、この子の餌はどうしよう?」
更に、問題勃発。
ここは魔導学院であって、当然猫の餌など置いていない。
生徒達は無断で街に出ることは出来ないので、近所で買ってくるという訳にもいかない。
そもそも、既に下校時刻は過ぎており、学校の門は閉まっている。
「猫って、何食べるんだっけ?」
「チーズとか?」
「チーズなら、学院の食堂にもあるかも」
「どうだろう。人間の食べ物は食べさせちゃ駄目なんじゃないかな…」
意見が錯綜。
残念ながら、この7人の中に、猫を飼ったことのある経験がある者はいなかったらしい。
「牛乳なら良いんじゃないかな。牛乳あげようよ」
と、一人の女子生徒が提案した。
「牛乳か…。食堂にありそうだね」
「じゃあ、取りに行く?」
「でも…もう校舎はしまってるよ」
「そうだよね…。それに、夜の校舎って…最近、幽霊騒ぎが…」
「ちょ、やめてよ…。あれってガセなんでしょう?」
「さぁ。先生方はそう言ってるけど…」
まさか、幽霊騒ぎの正体は死体を操るネクロマンサーの仕業でした、とも言えず。
真実のほどは、生徒達には隠されたままである。
「どうしよう…」
「…先生に、相談してみる?」
「…」
皆心の隅っこで思っていながら、しかし言うに言えなかったことを、一人の女子生徒が口にした。
生徒達で対処しきれないなら、大人…すなわち教師…を呼べば良い。
しかし…。
「…」
無言で思い出す。彼女達の教師のことを。
「イレース先生…私達が猫を拾ったって聞いたら、どうするだろう?」
「…最悪保健所行きかも…」
有り得ない話ではない。
何せ、元ラミッドフルスの鬼教官と呼ばれた教師、イレース・クローリアは。
校内にカマキリ(学院長の分身)を見つけただけで、遥か彼方にぶん投げたという逸話がある。
猫を拾ったなどと言おうものなら、それこそ、保健所送りにされてもおかしくない。
彼女達にとって、それだけは絶対に避けなければならなかった。
ならば、どうするか。
猫に餌と、それからたちまちの居場所を与える為に…。
「…私、考えがあるんだけど…任せてもらえないかな?」
暗礁に乗り上げたところに、一人の女子生徒がそう提案した。
彼女の名は、ツキナ・クロストレイである。
びしょ濡れだった猫は、ふわふわの毛並みを取り戻した。
「良かった。元気になったみたい」
「可愛いね。何処から迷い込んだんだろう?」
ホッと一息ついたのも束の間。
困ったのはその後であった。
「でも…この子、どうしよう?」
一人がそう尋ねると、他の6人は黙り込んだ。
さすがに、そこまでは考えていなかった。
彼女達はただ、目の前の小さな命を見過ごせなかっただけである。
「飼い猫なのかな…?」
「分かんない…。首輪はつけてないみたいだけど」
「じゃあ野良猫かな…。随分汚れてたみたいだし…」
と、憶測を重ねても何も解決しない。
まさか猫に直接尋ねる訳にもいかず。
「…それに、この子の餌はどうしよう?」
更に、問題勃発。
ここは魔導学院であって、当然猫の餌など置いていない。
生徒達は無断で街に出ることは出来ないので、近所で買ってくるという訳にもいかない。
そもそも、既に下校時刻は過ぎており、学校の門は閉まっている。
「猫って、何食べるんだっけ?」
「チーズとか?」
「チーズなら、学院の食堂にもあるかも」
「どうだろう。人間の食べ物は食べさせちゃ駄目なんじゃないかな…」
意見が錯綜。
残念ながら、この7人の中に、猫を飼ったことのある経験がある者はいなかったらしい。
「牛乳なら良いんじゃないかな。牛乳あげようよ」
と、一人の女子生徒が提案した。
「牛乳か…。食堂にありそうだね」
「じゃあ、取りに行く?」
「でも…もう校舎はしまってるよ」
「そうだよね…。それに、夜の校舎って…最近、幽霊騒ぎが…」
「ちょ、やめてよ…。あれってガセなんでしょう?」
「さぁ。先生方はそう言ってるけど…」
まさか、幽霊騒ぎの正体は死体を操るネクロマンサーの仕業でした、とも言えず。
真実のほどは、生徒達には隠されたままである。
「どうしよう…」
「…先生に、相談してみる?」
「…」
皆心の隅っこで思っていながら、しかし言うに言えなかったことを、一人の女子生徒が口にした。
生徒達で対処しきれないなら、大人…すなわち教師…を呼べば良い。
しかし…。
「…」
無言で思い出す。彼女達の教師のことを。
「イレース先生…私達が猫を拾ったって聞いたら、どうするだろう?」
「…最悪保健所行きかも…」
有り得ない話ではない。
何せ、元ラミッドフルスの鬼教官と呼ばれた教師、イレース・クローリアは。
校内にカマキリ(学院長の分身)を見つけただけで、遥か彼方にぶん投げたという逸話がある。
猫を拾ったなどと言おうものなら、それこそ、保健所送りにされてもおかしくない。
彼女達にとって、それだけは絶対に避けなければならなかった。
ならば、どうするか。
猫に餌と、それからたちまちの居場所を与える為に…。
「…私、考えがあるんだけど…任せてもらえないかな?」
暗礁に乗り上げたところに、一人の女子生徒がそう提案した。
彼女の名は、ツキナ・クロストレイである。