神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「うちの教師達は、そんなに信用ならないか?」
「…グラスフィア先生…」
「迷い猫を拾ったってだけで叱ったりしないよ。俺もシルナも」
学院の中で起きたことなら、それが例えどんなことでも、俺達教師に責任の一端がある。
もっと早く話して欲しかったものだ。
そうすれば、隠れてこそこそ飼うような真似はさせなかったのに…。
…しかし。
生徒達には、今日に至るまでこのことを話せなかった、彼女達なりの理由があった。
「…でも、イレース先生の耳に入ったら、猫ちゃんが追い出されちゃうかと思って」
「…」
「…それで言えなかったんです…」
「…成程」
思わず納得しちゃったよ。
そうか。そうだな。
俺は怒らない。シルナもこの通り怒らない。
天音だったら多分、「可哀想に。世話をしてあげなきゃ」と言うだろうし。
ナジュは…多分もう知ってると思う。読心魔法で。
知っていながら黙ってるんだから、ナジュも猫を保護することに異論はないのだろう。
…でも、イレースならどうか。
元ラミッドフルスの鬼教官は、果たして学院の敷地内で猫を保護することに賛成してくれるだろうか。
非常に怪しいな。
生徒達が教師に猫の存在を黙っていたのは、イレースの逆鱗に触れることを恐れたからか…。
納得だな。
「…この子、きっと行くところがないんです。帰るところも」
と、女子生徒の一人が言った。
…本当に野良猫なんだったら、そうだろうな。
「学院で飼ってあげられませんか?勿論、世話は私達が責任を持ってやります」
「お願いします、学院長先生」
「私達、この子を無責任に放り出すような真似は出来ません」
生徒達は口々にそう言って、俺とシルナに懇願してきた。
…あまりに必死な表情に、俺も思わずたじろいでしまうほどだった。
…そこまでして…。
「…シルナ」
ちらりとシルナの方を向くと。
「…よし、分かった」
シルナもまた覚悟を決め、一つ頷いた。
「イーニシュフェルト魔導学院学院長の名にかけて、この猫ちゃんは学院の中で飼うことを許可します」
…そう言うと思ったよ。
猫に限らず、行き場をなくして彷徨っている者を見過ごすことは出来ない。
それがシルナの性分だからな。
「…だよねー」
「そう言うと思った」
同じくシルナに拾われた令月とすぐりが、互いに顔を見合わせてそう呟いた。
何なら、俺もシルナに拾われた身だからな。
昔も今も全く変わってないようで安心したよ。
「学院長先生…!ありがとうございます…!」
「良かった。猫ちゃん、ここにいられるって」
「でも…他の先生方は?その…イレース先生は…」
女子生徒の一人が、口ごもるようにそう言った。
他の先生は…大半がシルナの分身だから反対する訳もなく。
一番の懸念は、やはりイレースだな。
鬼教官の許可を得られるかどうかが、この猫の運命を決めると言っても過言ではない。
…正直、俺もイレースを説得出来るとは思えない。
しかし…。
「大丈夫。必ず私がイレースちゃんを納得させてみせるから」
…おいおい。
そんな大言壮語叩いて大丈夫か?
「ほ、本当ですか?」
「本当だよ、大丈夫。私に任せて」
「…ありがとうございます…!」
生徒達は何度もお礼を言って、安心したような表情で学院長室を出た。
…さて。
ここから、本当の修羅場の始まりだな。
「…グラスフィア先生…」
「迷い猫を拾ったってだけで叱ったりしないよ。俺もシルナも」
学院の中で起きたことなら、それが例えどんなことでも、俺達教師に責任の一端がある。
もっと早く話して欲しかったものだ。
そうすれば、隠れてこそこそ飼うような真似はさせなかったのに…。
…しかし。
生徒達には、今日に至るまでこのことを話せなかった、彼女達なりの理由があった。
「…でも、イレース先生の耳に入ったら、猫ちゃんが追い出されちゃうかと思って」
「…」
「…それで言えなかったんです…」
「…成程」
思わず納得しちゃったよ。
そうか。そうだな。
俺は怒らない。シルナもこの通り怒らない。
天音だったら多分、「可哀想に。世話をしてあげなきゃ」と言うだろうし。
ナジュは…多分もう知ってると思う。読心魔法で。
知っていながら黙ってるんだから、ナジュも猫を保護することに異論はないのだろう。
…でも、イレースならどうか。
元ラミッドフルスの鬼教官は、果たして学院の敷地内で猫を保護することに賛成してくれるだろうか。
非常に怪しいな。
生徒達が教師に猫の存在を黙っていたのは、イレースの逆鱗に触れることを恐れたからか…。
納得だな。
「…この子、きっと行くところがないんです。帰るところも」
と、女子生徒の一人が言った。
…本当に野良猫なんだったら、そうだろうな。
「学院で飼ってあげられませんか?勿論、世話は私達が責任を持ってやります」
「お願いします、学院長先生」
「私達、この子を無責任に放り出すような真似は出来ません」
生徒達は口々にそう言って、俺とシルナに懇願してきた。
…あまりに必死な表情に、俺も思わずたじろいでしまうほどだった。
…そこまでして…。
「…シルナ」
ちらりとシルナの方を向くと。
「…よし、分かった」
シルナもまた覚悟を決め、一つ頷いた。
「イーニシュフェルト魔導学院学院長の名にかけて、この猫ちゃんは学院の中で飼うことを許可します」
…そう言うと思ったよ。
猫に限らず、行き場をなくして彷徨っている者を見過ごすことは出来ない。
それがシルナの性分だからな。
「…だよねー」
「そう言うと思った」
同じくシルナに拾われた令月とすぐりが、互いに顔を見合わせてそう呟いた。
何なら、俺もシルナに拾われた身だからな。
昔も今も全く変わってないようで安心したよ。
「学院長先生…!ありがとうございます…!」
「良かった。猫ちゃん、ここにいられるって」
「でも…他の先生方は?その…イレース先生は…」
女子生徒の一人が、口ごもるようにそう言った。
他の先生は…大半がシルナの分身だから反対する訳もなく。
一番の懸念は、やはりイレースだな。
鬼教官の許可を得られるかどうかが、この猫の運命を決めると言っても過言ではない。
…正直、俺もイレースを説得出来るとは思えない。
しかし…。
「大丈夫。必ず私がイレースちゃんを納得させてみせるから」
…おいおい。
そんな大言壮語叩いて大丈夫か?
「ほ、本当ですか?」
「本当だよ、大丈夫。私に任せて」
「…ありがとうございます…!」
生徒達は何度もお礼を言って、安心したような表情で学院長室を出た。
…さて。
ここから、本当の修羅場の始まりだな。