神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
ネクロマンサーと言い、半端者と言い、役立たずばかりだ。

あろうことか、一時は手中に収めた聖魔騎士団副団長を取り逃がすとは。

最悪シルナ・エインリーを殺せなくても、聖魔騎士団の副団長を殺せていれば、それだけで儲けものだったのに。

結局俺は、『HOME』の軍属魔導師を二人も派遣して。

全く、何一つ成果を挙げられなかったどころか。

ルディシアとマシュリの二人を、ルーデュニア聖王国に与える結果になってしまった。

具体的に、どうやってあの二人を丸め込んだのか知らないが…。

想像に難くない。

ルディシアは、より面白いと思った方についただけ。

マシュリの方は…舌先三寸で丸め込まれたのだろう。

「お前に居場所を与えてやる」とでも言われたんじゃないだろうか。

あの男は、居場所だの帰る場所だの、そういう言葉に覿面に弱かった。

だからこそ、そういう言葉を巧みに使って利用していたのだが…。

結局は、あの男もルーデュニア聖王国側についた。

…役立たずめ。

己の役目を果たせない人間に、生きる価値などない。

ルディシアもマシュリも、所詮はその程度だったということだ。






「…だから言ったんだ。シルナ・エインリーは一筋縄では行かないと」

「…」

コクロとは、また違う声。

王の間に現れたのは、この度の作戦を俺に持ちかけてきた、異国人の女だった。

名を、ヴァルシーナ・クルスという。
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