神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
言わずもがな、マシュリはまだルーデュニア聖王国に来たばかりだ。

そもそもマシュリは、冥界生まれの冥界育ちなので。

現世での生活そのものが、マシュリにとっては目新しい経験なんじゃないだろうか。

折角、アーリヤット皇国を裏切ってまで、ルーデュニア聖王国についてくれたのた。

どうせなら、その選択肢は間違っていなかったと思うほど、もっとこの国を好きになって欲しい。

「やっぱり、ここも居心地悪いから出ていく」とは言わせたくない。間違っても。

その為に、国内を案内して回るのは良いかもしれないな。

「シルナにしては良い提案だな。俺も賛成だよ」

「本当?ありがとう、羽久。シルナに『しては』なんて余計な一言がなかったら、もっと嬉しかったな」

それは残念だったな。

「僕も、良い考えだと思うよ。早くこの国に慣れて欲しいし…」

天音も賛成。

そうそう、当の本人は…。

「お前はどうだ?マシュリ。興味あるか?」

「うん。見てみたいね」

マシュリも乗り気のようだ。

じゃ、決まりだな。

「ちっ…。明日は、来週実施する抜き打ちテストでも作ろうと思っていたのに…」

反対こそしなかったものの、イレースは舌打ち混じりにそう言った。

良かった。お陰で救われた生徒が大勢いるな。

抜き打ちテストなんて、教師にとってはともかく、生徒にとっては地獄でしかない。

更に。

「なーんだ。明日は休みだから、一日中リリスと精神世界でイチャイチャしようと思ってたのにー」

と、口を尖らせるナジュ。

そうか。予定入れて本当に良かった。

不健全極まりない休日を過ごさせることになるところだった。

「それじゃあマシュリ君、明日は宜しくね」

「こちらこそ、宜しく」

マシュリに、帝都を案内する…か。

俺も、色々とプランを考えておかないとな。
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