神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
猫カフェを出る頃には、既に日が暮れかけていた。

思いの外、満喫してしまったらしい。

恐るべし、猫カフェ。

「あ、やっと出てきた」

「待ちくたびれたよ、もー」

令月とすぐりが、地面に座り込んで待っていた。

悪い悪い。

「仕方ないから、僕達も野良猫を追いかけ回して遊んでたよ」

何やってんだ、お前らは。

大人しく待っているということが出来ないのか?なぁ。

野良猫に申し訳なかった。

…それはさておき。

「どうする?これから…」

今日はここまで、シルナ、イレース、ナジュと天音、令月とすぐりのセレーナおすすめスポットに案内してきた。

残るは俺だけだ。

しかし、猫カフェでかなり時間を食ってしまった。

これから、また新しい場所に向かっていたら、学院に帰る頃には深夜になってしまうだろう。

「さすがに…今日はもう帰った方が良いかもね」

「私はこの後、抜き打ちテストを作らなければならないので。これ以上付き合っている暇はありません」

天音とイレースが言った。

結局抜き打ちテストはやるのか。可哀想に、生徒達。

「仕方ない…。じゃあ、今日はもう帰るか…」

「ちなみに、羽久は何処を紹介するつもりだったの?」

と、シルナに聞かれた。

あぁ、うん…。

色々考えたんだけどさ。王都のおすすめスポット…何処が良いかって。

で、俺が出した結論は…。

「マシュリ本人に聞こうと思ってたんだよ、俺は…。行きたいところはあるか、って」

俺は、自分の選んだ特定の場所にマシュリを連れて行くのではなく。

マシュリの意見を聞いて、マシュリの行きたいところに案内するつもりだった。

まぁ…残念ながら、今日はもう時間がないんだが…。

「何それ、本人に聞くなんてズルくない?」

「自分で考えることを放棄してるね」

すぐりと令月がそう言った。

うるせぇ。悪いかよ。

少なくとも、王都の裏路地や空き家を紹介したお前達よりはマシだろ。

「今日はもう行けないから、日を改めてになるが…」

と、俺はマシュリに言った。

「何処か行きたい場所はあるか?」 

「…」

マシュリは無言で、少し考えていた。

何処でも良いぞ。

猫カフェでも、動物園でも。

王都セレーナには、大抵の施設なら揃ってるからな。

何なら王都じゃなくても、日帰り出来る距離なら、別の都市でも構わない。

すると、マシュリは。

「…それなら、一つ行きたい場所があるんだけど…」

お?

良かった、本人に聞いて。

やっぱり行きたいところがあったんだな。

「何処だ?」

「向こうの都合も聞かないといけないだろうから、明日明後日の話にはならないかもしれないけど…。僕が行きたいのは…」

そう言って、マシュリが提案したのは、俺にとっても意外な場所だった。
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