神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
アトラスはしばし、無言でそんな子供達を見つめ…。

そして。

「…仕方ない。今夜は許す」

だ、そうだ。

良かった。危うく、リアル妖怪大戦争が始まるところだった。

巻き込まれたら死ぬぞ。俺とシルナ。

「だが明日は…明日こそは俺が…」

なんかぶつぶつ呟いてる。

明日こそは、お前が遊んでやってくれよ。

「全くもう…。お客様の前だというのに、恥ずかしいったら…」

「客…?」

シュニィが呆れたように呟くのを聞いて、アトラスは初めて、俺とシルナの方を向いた。

…よう。今気づいたのか?

「…学院長と羽久じゃないか。うちに来てたのか」

やっぱり今気づいたらしい。

結構前からいたんだけど…?

「それに、お前は…」

「…どうも…」

俺とシルナのみならず、マシュリが来ていることにも気づいたようだ。

アトラスは、憎き(?)マシュリを見ても、「出ていけ」とは言わなかった。

それよりも。

「お前が、アイナやレグルスと遊んでくれたのか」

そっちの方が遥かに重要とばかりに、そう尋ねた。

「遊んだって言うか…。僕はただ『変化』してただけだけど…」

それだけでも充分だと思うけどな。

アイナ達が、勝手に玩具にしてたぞ。

「ごめん。君の家族に…僕が勝手に踏み入るような真似をして」

…マシュリ…。

お前、そんな風に思って…。

「そんな、マシュリさんが謝ることではありませんよ。むしろ、あなたは…」

シュニィが慌ててフォローしようとしたが、それを遮るように。

「先を越されたのは悔しいが、二人をこんなに満足させてくれたのは、感謝する」

…これには、俺も驚いた。

憎き誘拐犯…のはずなのに、マシュリに感謝するとは。

それはそれは、これはこれってことか。

そういう潔いところは、アトラスの長所だよな。

「…先を越されたのは悔しいがな」

大事なことだから二度言いました。

ま、まぁそれは良いじゃないか。

たまにはちょっと…気分を変えてみたんだよ。
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