神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「…そうですね、アイナもレグルスも、とても楽しそうにしてましたから」

と、シュニィは微笑みを浮かべて言った。

お菓子で釣ろうとしていたシルナの浅はかな懐柔策よりは、遥かに効果的だったな。

マシュリの妖怪百鬼夜行。

「また遊びに来てください。子供達もきっと喜びます」

…だろうな。

何せ、アトラスの血を継ぐ体力おばけの子供達をが、疲れ切って眠るまで相手をしてやれるのは。

アトラスか、あとは今日のマシュリくらいなものだ。

是非ともまた訪ねてきて、二人と遊んでやってくれ。

しかし、マシュリは視線を逸らして。

「…でも僕は…君の居場所を…」

奪おうとしたから、この家を訪ねる資格はない、って?

ったく、馬鹿め。

「そうです、私の居場所はここです。…あなたが私に返してくれた居場所です」

「…」

シュニィがそう言うと、マシュリはハッとして顔を上げた。

そこには、相変わらず微笑んだままのシュニィがいた。

「また来てくださいね、マシュリさん。いつでも歓迎します」

…ま、シュニィはそう言うよな。

アトラスの方も、特に反対はしなかった。
 
それどころか、そうしろとばかりに頷いていた。

…良かったな、マシュリ。

お前の居場所、また一つ増えたぞ。

「…君達は、僕に優し過ぎだよ」

マシュリは俺達に聞こえないように、小さく呟いた。

   


このとき俺達は、マシュリが密かに大きな決意を抱いていたことを、まだ知らなかった。
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