神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
第2章
――――――猫が学院にやって来て、一週間が経った。

イレースの言う通り、全ての生徒に受け入れられる訳ではないことは分かっていた。

…しかし…。

「あ、猫ちゃんだ」

「おいでー、餌があるよ〜」

「ブラッシングしてあげるね」

学院の敷地内を歩いていると、ちらほらとそんな女子生徒達の会話が聞こえてくる。

文字通りの猫可愛がりぶりである。

更に、男子生徒からも。

「あ、猫だ」

「ほら、猫じゃらしだぞ」

「お前、そんなの持ち歩いてるのか?」

「良いだろ、別に」

なんて会話をして、猫じゃらしで遊んであげていた。

男子生徒からも人気とは。

あっという間に、学院のアイドル的存在になったな。

今のところ、餌当番もきちんと守られている。

それどころか、皆争うようにして餌当番の日を心待ちにしている始末。

そんなに食べさせたら肥満になるぞ。シルナじゃないんだから。

勿論、全ての生徒が快く猫を迎えている訳じゃないはずだ。そういう生徒は多分、意識的に猫に近寄らないようにしているのだろう。

そしてナジュの言った通り、そういう生徒には猫の方も近寄らないようで。

自分を可愛がってくれる人にのみ近寄り、イレースを始め、自分に好意的でない人間の傍には近寄らない。

なかなか賢い猫だ。

飼い始めて一週間になるが、特に猫のせいで不都合が起きたという報告も聞いていない。

まぁ、まだ一週間しか経ってないから、これから何か問題が起きるかもしれないが…。

とりあえず滑り出しは上々と言うか、幸先良いんじゃないか?

と、思っていた丁度そのとき。






「猫ちゃんの名前を決めてあげようと思うんだ」

放課後の学院長室で、シルナがそう提案した。
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