神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「その方法を試すまで、もう少し待って欲しい。もし上手く行かなかったら…そのときは、君の好きにして良いから」

「ちょ、おい…」

シルナの奴、何言ってるんだ。

もしあの方法が上手く行かなかったからって、それでマシュリを諦めるつもりなんて微塵もない。

しかし。

「大丈夫です、ちゃんと学院長なりの根拠があるみたいなので」

ナジュが口元に人差し指を立ててそう言い、俺を制した。

…そうかよ。分かった。

じゃあ、俺はシルナを信じるよ。

絶対に成功させてみせる。

「もう少しだけ、私達に猶予をくれないかな?」

「…でも、僕はいつ暴走するか分からないのに」

「そんなにすぐじゃないでしょ?…『以前』だって…暴走したのは、何年も経ってからだったはずだよ」

「以前」…つまり、マシュリの恋人を殺してしまったとき。

マシュリが暴走したのは、スクルトという女の子に出会って何年も経ってからのことだ。

そのときと同じだと考えれば、俺達も、何年もの猶予があるはずなのだが…。

…まぁ、それは分からんよな。

猶予があるように見えて、暴走のタイミングはランダムなのかもしれないし…。

マシュリ自身、自分にかけられた呪いがどういうものなのか、全貌を理解している訳ではない。

だからこそ、呪いなのだ。

いつどんなとき、自分を、周囲を苦しめるか分からない。

「勝手に消えて、いなくなったりしないで。…お願いだから」

「…分かったよ」

マシュリは苦渋の決断とばかりに、苦々しい顔で頷いた。

よし。

「…でも、長くは待てないから」

「分かってるよ、ありがとう」
 
じゃあ、ひとまず…マシュリが出ていくかどうかは、保留だな。

急いで、何とかしなければ。
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