神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
豆腐って。

そりゃ豆腐は美味しいけど。

しかし名前の中に「腐」という字を使うのは、あまり綺麗じゃないと言うか…。

「それは…絹豆腐?木綿?」

「あのな令月。そこは特に重要じゃない」

絹か木綿はどうでも良いんだよ。

豆腐であることが問題なんだ。

「豆腐は白だろ。こいつは銀色だぞ」

「ゴマ豆腐なんだよ、多分」

そういうことかよ。

ちょっと納得してしまった自分がいるが、豆腐はさすがにどうなんだ…?

健康的だな。

「そもそもこの猫、オスなのでは?」

と、イレースが言った。

そういえば。

チョコちゃんだの豆腐ちゃんだの、勝手にちゃん付けして呼んでるが。

こいつはオスだから、チョコくんと豆腐くんだ。

うーん。語呂が悪い。

「今の中で、少しでもまともな名前はあるか…?」

「アレクサンドリア4世では?」

それが一番ねーよ。

「やっぱりブチ丸で良いんじゃないかな」

「いや〜。猫ならミケでしょ」

あのな、令月もすぐりも。

よく見てみろ。この猫はブチ猫でもないし、ミケ猫でもないんだぞ。

黄色人種の人間に「白人」って名前つけてるようなもんだぞ。

それはちょっと解釈違いだろ。

「猫の名前ごときで時間を取られるのか面倒臭い。いっそ名無しの権兵衛でよろしい」

イレースが投げ槍になってしまってる。

名無しの権兵衛って、それは名前じゃないだろ。

「やっぱりチョコちゃんで良いんじゃない?…あっ、カカオちゃんでも良いかも!」

シルナはチョコから離れろ。

黒猫でもねーんだよ。

皆真面目に考えてるか?猫とはいえ、名前ってのは大事だぞ。

その名前でこれから先、この猫を呼ぶことになるんだからな。

「…それじゃ、その…僕達じゃなくて、生徒に意見を募ってみたらどうかな?」

と、天音が提案した。

生徒に?

「これが良いなって思う猫の名前を、生徒に考えてもらって…紙に書いて箱に入れるんだよ」

成程。 

目安箱みたいに、校内に意見箱を設置しておき。

何か良い名前を思いついたら、紙に書いて意見箱に入れてもらう。

良いかもしれないな。

何せ、俺達教師陣+元暗殺者組の意見は、どれも散々だからな。

こうなったら、よりネーミングセンスのある生徒に頼る他あるまい。

生徒達だって、これから学院のマスコットとなる猫の名前なのだ。自分達で決めたいだろう。

教師が勝手に決める方が間違ってるな。

よし。

「そうだな。生徒に意見を出してもらうか…」

「分かった。じゃあ、早速意見箱の用意をしようか」

「…やれやれ。猫一匹の名前くらいで大袈裟な…」

まぁそう言うなよ、イレース。

どうせなら良い名前をつけてやりたいじゃないか。
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