神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
第14章
――――――…生まれたときから、誰にも受け入れられないのが当たり前だった。

人が当たり前のように持っている優しさ、愛情、温もり。

それらは僕にとって幻想で、決して手の届かないものだった。

手を伸ばしても追いすがろうとしても、掴むことは出来ない。

来る日も来る日も、僕は同族に罵られ、石を投げられてきた。




「こっちに来るな、バケモノめ!」

「なんて恐ろしい姿だ。まさに罪の姿そのものだ」

「お前のような生き物が、この世に生まれてしまったことが間違いだったんだ」

「生きてきて恥ずかしいと思わないのか?」




この世のありとあらゆる汚い言葉をぶつけられ、蔑まれ続ける。

群れの中から阻害され、一人ぼっちでふらふらと彷徨うしかない。

自分の何が悪いのか、何故そんな風に傷つけられるのか、幼い頃の僕には分からなかった。

誰も説明してくれなかった。

でも、水面に映る自分の姿を見れば、僕がいじめられる理由は明らかだった。

この異形の姿を見れば、誰だって近寄りたくないに決まってる。

成長するにつれ、段々と心が麻痺していく。

どんな言葉で傷つけられようとも、何も感じなくなっていく。

殴られても、石を投げられても、痛くない。

一人ぼっちで生きていくのが当たり前。誰にも受け入れられないのが当たり前。

僕はこうして、永遠に孤独の中で生きていく。

望もうと望むまいと、それ以外に、僕に選択肢などなかった。

何も感じなくて良い。全て忘れてしまえば良い。

時折、息を吹き返したように傷口がぱっくりと開いて、酷く痛むこともあるけれど。

感情に蓋をしよう。何を言われても何も感じないように。

鏡に映る自分の姿に絶望しないように。

一人ぼっちで生きていけるように。

…その、はずだったのに。




「あなたと一緒なら、私はもう寂しいことなんてないわ」

僕は出会ってしまった。自分の孤独を埋めてくれる存在に。

これこそ、僕の真の過ちだったのだ。
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