神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「また遊びに来てくださいね、マシュリさん。あれ以来アイナが毎日、マシュリお兄ちゃんと遊びたい、って言ってるんです」
シュニィ・ルシェリートは、笑いながらそう言った。
何でそんな甘いことが出来るんだ。
自分を拉致した相手に向かって、優しく微笑むなんて。
ましてや、自分の娘と遊ぶように頼むなんて。
僕を憐れんでいるのでもなく、ましてや蔑みの気持ちなんて欠片もない。
ただ本物の善意、本物の優しさで僕に接してくれる。
シュニィ・ルシェリートもまた、生まれによって苦しみ、深い孤独の中で生きてきた。
それ故に、彼女には分かる。
世の中は案外、捨てたものじゃないと。
自分の醜い姿を気にしない、他の人と同じように接しくれる人がいると。
彼女は、そんな優しい人に出会えた。
だからこそ、僕に対して同じように優しく出来るのだ。
自分が受けた優しさを、その温もりを…僕に教えてくれようとしている。
知ってるよ、僕だって。
世の中は酷いことばかりじゃないんだって、分かってる。
スクルトに出会って、僕はそう思えたんだから。
でも、いずれその温かい居場所を、自分の手で壊してしまうとしたら?
それが分かっているのに、どうして今の安楽に身をやつすことが出来るのか。
認めよう。確かにここは、僕にとって温かい居場所だ。
ずっとここに居たい。出来ることなら、僕もシルナ・エインリーや、シュニィ・ルシェリート達と肩を並べて生きたい。
でも、それは許されない。
これじゃ、スクルトのときと同じだ。
こんな幸せは、決して僕のものであってはならないのに。
皆が優しくしてくれるから。居心地が良いから。
ずっと胡座をかき続けて、そしていつか…。
…「時間切れ」のときが来て、取り返しのつかないことになって。
そのときになって僕は、再び自分の罪の重さを知る。
そうなる前に、僕はこの場所を出ていくべきだった。
誰にも迷惑をかけないように。もう二度と…誰の未来も奪わずに済むように。
…それなのに。
僕の心の弱さが、それを許さなかった。
あと少し、ほんの少しだけこのままで…。
そう思い続けて、僕は破滅の時を先送りにした。
シルナ・エインリー達が、いくら僕に優しかろうと。
世界は、僕の罪は、いつだって僕に優しくなんてしてくれない。
…破滅の時は、ある日突然やって来た。
シュニィ・ルシェリートは、笑いながらそう言った。
何でそんな甘いことが出来るんだ。
自分を拉致した相手に向かって、優しく微笑むなんて。
ましてや、自分の娘と遊ぶように頼むなんて。
僕を憐れんでいるのでもなく、ましてや蔑みの気持ちなんて欠片もない。
ただ本物の善意、本物の優しさで僕に接してくれる。
シュニィ・ルシェリートもまた、生まれによって苦しみ、深い孤独の中で生きてきた。
それ故に、彼女には分かる。
世の中は案外、捨てたものじゃないと。
自分の醜い姿を気にしない、他の人と同じように接しくれる人がいると。
彼女は、そんな優しい人に出会えた。
だからこそ、僕に対して同じように優しく出来るのだ。
自分が受けた優しさを、その温もりを…僕に教えてくれようとしている。
知ってるよ、僕だって。
世の中は酷いことばかりじゃないんだって、分かってる。
スクルトに出会って、僕はそう思えたんだから。
でも、いずれその温かい居場所を、自分の手で壊してしまうとしたら?
それが分かっているのに、どうして今の安楽に身をやつすことが出来るのか。
認めよう。確かにここは、僕にとって温かい居場所だ。
ずっとここに居たい。出来ることなら、僕もシルナ・エインリーや、シュニィ・ルシェリート達と肩を並べて生きたい。
でも、それは許されない。
これじゃ、スクルトのときと同じだ。
こんな幸せは、決して僕のものであってはならないのに。
皆が優しくしてくれるから。居心地が良いから。
ずっと胡座をかき続けて、そしていつか…。
…「時間切れ」のときが来て、取り返しのつかないことになって。
そのときになって僕は、再び自分の罪の重さを知る。
そうなる前に、僕はこの場所を出ていくべきだった。
誰にも迷惑をかけないように。もう二度と…誰の未来も奪わずに済むように。
…それなのに。
僕の心の弱さが、それを許さなかった。
あと少し、ほんの少しだけこのままで…。
そう思い続けて、僕は破滅の時を先送りにした。
シルナ・エインリー達が、いくら僕に優しかろうと。
世界は、僕の罪は、いつだって僕に優しくなんてしてくれない。
…破滅の時は、ある日突然やって来た。