神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「ベリクリーデが他人に興味を示すなんて、珍しいな…」

大抵、ぽやんとしてると言うか…。自由奔放に生きてるよな。
 
故に、それに毎回振り回されるジュリスが苦労している。

「悪い人だからね。ちゃんと見てた方が良いと思ったんだ」

と、ベリクリーデ。

…悪い人、ね…。

「…あのさ、別に悪意があって言ってるんじゃないとは分かってるが、マシュリをあんまり…悪い人って言うの、やめてやってくれないか?」 

俺は良いとして、本人が聞いたら良い気分はしないだろう。

しかも、何度も言うように、別にマシュリが悪い訳じゃないから。

心の狭いケルベロスの群れが、マシュリに忌々しい呪いをかけただけで。

マシュリは何も悪いことなんてしてない。それなのに、悪い人と呼ぶのはやめてやって欲しい。

「あいつは、ただ色んな生き物に姿を変えられるだけだよ。人間とか猫とか…」

…しかし、ベリクリーデは。

「だって、でも悪い人だよ?」

…あくまでそういう認識なのか。

いや、うん。悪意がないのは分かってるんだが。

「ただの、人間とケルベロスのハーフだよ。それが何か悪いのか?」

「?ううん、それは悪くないよ」

…え?

「もっと悪いことしてるから…神様が怒るんだよ。一緒にいたら、私達も怒られるかも」

…えっ…と…。

なんか、凄い重要なこと言ってると思うんだけど。

でも、言ってることの意味が分からない。

神様って?怒ってるのはマシュリの同族…ケルベロスの連中だろ?

何で、そこで神様が出てくる…、

「いつ怒られてもおかしくないから、見に来た方が良いって思って」
 
「…ベリクリーデ…。お前さっきから何言ってるんだ?」

「?」

本人もよく分かっていないらしく、首を傾げていた。
 
角砂糖舐めながら。

つくづく、この場にシルナがいないことが悔やまれる。

ベリクリーデがこんな大事な情報をくれてるのに、あの馬鹿は何やってんだよ。

とにかく、少しでも分かることをまとめよう。

「ベリクリーデ。もうちょっと詳しく…」

と、俺が言いかけたとき。

「あ、来た」

開けっ放しの窓から、いろりの姿をしたマシュリがやって来た。

どうやら、自分の話をしているのを聞きつけたらしいな。
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