神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
いろりは、その場でくるりと一回転。

人間の…マシュリの姿に『変化』した。

お帰り。

そんなマシュリを見て、ベリクリーデが一言。

「悪い人だー」

ただの悪口にしか聞こえないが、ベリクリーデにそんなつもりはないので、誤解しないでもらいたい。

「ベリクリーデ、お前失礼だろ」

「何で?ジュリス。だって悪い人だよ」

言いたいことは分かるんだが、言い方をもう少し…変えて欲しかったな。

気を悪くしただろうかと思ったが、マシュリは無言だった。

ただ黙って、顔をしかめてベリクリーデをじっと見つめていた。

「…大丈夫か?マシュリ…」

なんか…顔色が良くないが。

「…別に…。どうも、今朝から頭痛が酷くて」

そうなのか?

「そうと言ってくれれば良かったのに。回復魔法…天音にかけてもらうか?」

シルナがいれば良かったんだが…。俺は回復魔法は苦手だからな。

天音に頼めば、すぐに回復魔法をかけてくれるだろう。

「いや…。構わないよ、でも何だか…」

「…どうした…?」

「…身体がダルい」

…本当に大丈夫か?

風邪?風邪なのか?

魔物って風邪引くの?

「やっぱり天音を呼んだ方が良いんじゃないか。ちょっと待ってくれ、すぐ呼んでくるから」

「…そうじゃないよ」

俺が立ち上がりかけると、ベリクリーデがポツリとそう言った。

は?そうじゃないって…何が?

「…あのね、今凄く…獣臭い」

「…えっ…」

「怒ってるんだ、アレが…。凄く悪い人に。罰が下るんだよ。…りゅう、」

…りゅう?

何のことか、とベリクリーデに尋ね返す暇はなかった。

その言葉を聞いた途端、マシュリの目の色が変わった。

「…!?」

突然、学院長室を吹き飛ばさんばかりの、凄まじい魔力が湧き上がった。
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