神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…お前の罪じゃない。

その一言で、マシュリは両目を大きく見開き。

そして、大粒の涙を溢した。

「…もう良いだろ?何もかも自分のせいにしなくたって」

お前はかつて、自分の暴走のせいで大切な人を殺してしまったから。

その責任を全部、自分で背負い込んでしまったんだろうけど。

だけどその罪は元々、マシュリのものではない。

「お前にもあるんだ。自分の未来を自由に描く権利が…」

そしてきっと、その未来は幸福に満ちている。

…そうだったんじゃないのか?お前の恋人が見たであろう未来は。

「…だから、生まれてこなければ良かった、なんて言うな」

そんなこと思ってるのは、お前だけだよ。

生きるのが苦しいから、そう思ってる。

でもお前の周りに、お前なんか生まれてこなければ良かったなんて思ってる人はいない。

むしろ、その逆。

「マシュリに会えて良かったって…マシュリのこと大切に思ってる人は、皆そう思ってるよ」

例え傷つけられても、未来を奪われても。

それでもマシュリに会えて良かった、って思う人が。

…会ったことはないけど、お前の恋人も…きっと同じように思っていたんじゃないのか。
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