神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
――――――…こうして。

暴走するかもしれないという、僕の一番の心配事は。

左手の中指に嵌められた、小さな黒い指輪のお陰で解決した。

何とも拍子抜けである。

こんな方法で、暴走を抑えることが出来るなんて。

誰も僕を止められないと思っていたのに。

結果、僕はこれからも…このイーニシュフェルト魔導学院に。

この居心地の良い場所に、ずっと居ても良いことになった。

今度こそ、ここが僕の「家」。

…未だに実感が湧かない。

このような幸福が、このような安らぎが…果たして、本当に僕のものであって良いのだろうか?

いつかまた、この手で全てを壊してしまうのではないか…。

完全に安心した訳じゃない。

やっぱりお前を飼う訳にはいかないから、出ていってくれ…と。

いつかそう言われる日が来るんじゃないか、口には出せないけど、まだ不安だった。

…それに…。

半獣であることの罪は、確かに僕のものではない。

でも。

僕の中にある…「もう一つの罪」は…消えることなく残っている。

これは正真正銘、弁護の余地もない僕の罪。

この罪だけは…誰にも知られてはいけない。

もう二度と、決して。

僕のせいで、誰の未来も奪わないように。






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