神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
名前案はたくさん集まったが、しかしその中からどうやって一つを選んだら良いものか。

如何せん俺達、ネーミングセンスのないメンツが集まってるからな…。

折角、生徒達がセンスのある名前を提供してくれてるのに…。

選ぶ俺達にセンスが無いんじゃ、折角の意見を活かせない。

「あ、見て。ぼたもち君だって。これいーじゃん」

「僕はこっちの、ちくわ丸っていうのが良いと思うな」

ほらな。元暗殺者組もこの適当ぶり。

ぼたもちはともかく、ちくわは酷いだろ。

そりゃちくわも美味しいけど。

「どうする?学院長先生が目を瞑って意見箱に手を突っ込んで、抽選で一枚を選ぶとか?」

シルナに全てが懸かってるのか。

「それは無理だろ。シルナのことだ。絶対ろくでもない一枚を選ぶに決まってる」

「…羽久が私に失礼なこと言ってる気がする…」

気のせいだ。

俺は事実を言ったまでだからな。

シルナの運に全てを任せるのは、あまりにハイリスクだ。

「それに、生徒から意見を募ったのに、結局学院長が決めるんだったら、生徒から不満が出ませんか?」

と、ナジュ。

そうだな。

折角生徒達が、良い名前を考えてくれたのに。

それを選ぶのがシルナじゃあ、本末転倒というものだろう。

「…羽久もナジュ君も、私に失礼なこと考えてる気がする…」

「じゃあ、いっそ猫本人に決めてもらったら?自分の名前なんだからさ」

と、すぐりが言った。

え?猫の本人?

「どうやって、猫が自分で名前を決めるんだよ」

「このテーブルの上に猫を放して、前足が踏んだ紙に書いてある名前にすれば良いんだよ」

それはそれで…ハイリスクと言うか。

本当、運次第って感じだな。

「猫本人に…っていうか、本猫?」

「分かりにくいから、本人で良いよ」

「本人に決めてもらったなら、生徒達からも不満は出ないでしょ」

…まぁ、一理あるな。

とにかく、俺達のセンスであれが良いこれが良いと選ばない方が良い。

だったら、やはりランダムで選ぶのが一番公平だろう。

それも、運のないシルナの抽選ではなく。

名前をつけてもらう本人、猫が自分で選んで決めるなら。

生徒達も納得するだろうし、何より猫も納得するんじゃないか?

何せ、自分で選んだ名前なんだから。

「他に方法もありませんし、それで決めるしかなさそうですね」

「よし。それじゃあ、記入用紙をテーブルいっぱいに広げて…」

「猫ちゃん、おいで。君の名前をこれから決めるよ〜」

シルナが猫を抱っこして、テーブルの上に連れてきた。

シルナが抱きかかえていると、どう見ても誘拐だな。

「あっ。また羽久が私に失礼なこと考えてる気がする…」

「良いから、早く放してやれ」

「…分かったよ…。…はい、猫ちゃん。好きな名前選んで良いよー」

そう言って、シルナは猫をテーブルに乗せてやった。

さて、どうなるかな?
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