神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
―――――――…マシュリの暴走から、およそ10日が経過したその日。

放課後の学院長室にて。

「こんにちは。学院の人気者、イケメンカリスマ教師のナジュが戻ってきましたよ〜」

「…おぉ…お帰り…」

…元気に戻ってきたのは良いんだけどさ。

…自分で言う?人気者って…。

「元気になったか?」

「もうとっくに元気ですよ。何なら、3日前くらいにはピンピンしてました」

だ、そうだ。

「でもベッドから出ようとしたら、天音さんが凄い顔で威圧するものだから…」

よし、よくやった天音。

多分天音のことだから、にっこりと「笑顔で」ナジュを止めてくれたんだろうな。

偉いぞ。

「仕方なく、今日まで我慢してたんですよ」

「それで良い」

「全く…大袈裟なんですよ。ちょっと肺と心臓が潰れただけなのに…」

それは「ちょっと」ではない。

ナジュの決め台詞じゃないけど、不死身じゃなかったら死んでるからな、それ。

「今回は無理もない状況だったから、目を瞑るけどな…。もう二度と、金輪際、あれをやるなよ」

リリスの力を行使する、あれ。

前回もそうだったが、今回も案の定反動が大きかった。

お陰で助かったのは事実だけど、不死身だからって、心臓が潰れるほどの反動を受けるようなこと。

もうやるなよ。今度やったら、天音に頼んで一生寝たきりになってもらう。

「ご老人じゃないですか…」

「良いから、言うことを聞け。お前がいなかったら生徒達が悲しむだろ」

人気者なんだろ?学院の。

自分で言ってんだから。

「それなんですけど、最近僕の立場も危うくなってきたんですよね」

「…は?」

真面目な顔して、何言い出すんだ。

「ほら、最近イーニシュフェルト魔導学院に、ニュースターが来ちゃったじゃないですか」

「…ニュースター…?」

って、誰?

学院に星なんかいたっけ?

「マシュリさん…というか、いろりさんですよ」

…あぁ、成程…。
 
確かに…あいつはニュースターかもな。

猫ってそんなに人気なのか、と思うくらいモテモテだもんな。

その人気ぶりと来たら、相手にしてもらえなくなったシルナが、泣いてハンカチを噛み締めているほどである。
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