神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「ようこそ!よく来てくれ…あ、イレースちゃんか…」

「…何ですか。悪かったですね、私で」

イレースは、シルナと遊んでくれないからな。

しかも、両手にどっさりと書類仕事を持ってきた。

「イレースちゃんあのね、生徒達がね、クッキーを食べに来てくれないんだよ。イレースちゃん、生徒達の分もクッキーを食べ、」

「この書類、明日までにお願いしますね」

案の定、イレースにはシルナの相手をするつもりはないらしく。

ドサッ、と書類の束をテーブルの上に置いた。

多い多い。

ちなみに、先日壊されたテーブルやソファや本棚は、本当にシルナのポケットマネーで新調した。

先日のキャットタワーと言い、最近シルナのポケットマネーは出ていく一方だな。

しかし本人としては、出費よりも、テーブルと一緒に吹き飛ばされた、秘蔵のチョコレートの方が痛かったらしい。

別にチョコくらい良いだろ。皆無事だったんだから、それ以上大切なことはない。

「足りない…。足りないんだよ、私の中で…チョコレート成分が。皆で一緒にチョコを楽しむ喜びが足りてない…」

何やらシルナがぶつぶつ呟いているが、正直常人には理解不能である。

チョコレート成分って何だよ。

「…よし、こうなったら」

あ?

「イレースちゃん、ルディシア君とマシュリ君の歓迎会を開くのはどうだろう!?」

「お断りします」

…シルナ、撃沈。

折角、名案!みたいな顔して提案したのにな。

イレースにかかったら、シルナの名案も風前の灯火みたいなもんだ。
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