神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
第16章
――――――…同時刻、ミナミノ共和国首都にある、一流ホテルの一室にて。
「お願いします。早く私を、ルーデュニア聖王国に返してください」
ルーデュニア聖王国の女王、フユリ・スイレンその人は。
ホテルの部屋の前に陣取っている警備員に向かって、唾を飛ばしていた。
もう、同じやり取りを何度繰り返したことか。
いよいよもって、不毛極まりない言葉の応酬である。
しかし、やめる訳にはいかなかった。
今こうしている間にも、祖国が危機に襲われている。
そう思うと、いくら不毛なやり取りでも、繰り返さずにはいられなかった。
…兄の仕掛けた罠に、今になってようやく気がついた。
いや…おかしい、とは思っていたのだ。
これまで、ほとんど国交のなかったミナミノ共和国から、サミット直前に突然招待された。
この時点から、心の中に疑念があった。
でも、ミナミノ共和国の政権が交代したのは紛れもない事実。
これを機に国交を深めたいという…ミナミノ共和国の主張を、私は信じたかった。
叶うなら、ミナミノ共和国とも親善を深めたいと。
そしてゆくゆくは、ミナミノ共和国をモデルケースとして。
他のアーリヤット共栄圏の国々とも、徐々に打ち解けていきたい。
そんな仄かな期待を抱いて、遥々、船に乗ってミナミノ共和国にやって来た。
そこで、私はミナミノ共和国の…そして、兄の思惑に気がついたのだ。
「お願いします。早く私を、ルーデュニア聖王国に返してください」
ルーデュニア聖王国の女王、フユリ・スイレンその人は。
ホテルの部屋の前に陣取っている警備員に向かって、唾を飛ばしていた。
もう、同じやり取りを何度繰り返したことか。
いよいよもって、不毛極まりない言葉の応酬である。
しかし、やめる訳にはいかなかった。
今こうしている間にも、祖国が危機に襲われている。
そう思うと、いくら不毛なやり取りでも、繰り返さずにはいられなかった。
…兄の仕掛けた罠に、今になってようやく気がついた。
いや…おかしい、とは思っていたのだ。
これまで、ほとんど国交のなかったミナミノ共和国から、サミット直前に突然招待された。
この時点から、心の中に疑念があった。
でも、ミナミノ共和国の政権が交代したのは紛れもない事実。
これを機に国交を深めたいという…ミナミノ共和国の主張を、私は信じたかった。
叶うなら、ミナミノ共和国とも親善を深めたいと。
そしてゆくゆくは、ミナミノ共和国をモデルケースとして。
他のアーリヤット共栄圏の国々とも、徐々に打ち解けていきたい。
そんな仄かな期待を抱いて、遥々、船に乗ってミナミノ共和国にやって来た。
そこで、私はミナミノ共和国の…そして、兄の思惑に気がついたのだ。