神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
国交を深める為、というのは全くの嘘だった。
そもそも、政権交代したばかりだというミナミノ共和国の首相にだって、ろくに会わせてもらえなかった。
到着した翌日に、ちらりと挨拶を交わしただけだ。
私はてっきり、そこで話し合いの席が用意されていると思っていたのに。
首相はのらりくらりと、「今日は予定が立て込んでいるから、また後日」と言い訳して逃げていった。
後日と言われても、サミットが目前に迫っている状況で、悠長なことはしていられない。
私がそう告げても、へらへら笑いながらのらりくらりと躱すだけ。
挙げ句、「良かったら、ゆっくり観光でもしたらどうですか?」と言い残して、さっさと去っていった。
私は国の代表として、ミナミノ共和国の首相と話をしに来たのであって。
断じて、この国に観光をしに来た訳ではない。
その時点で、私は焦りを感じていた。
まさかミナミノ共和国まで来て、ろくに首相と話し合いも出来ないなんて。
向こうが招待してきたにも関わらず、私は首都に用意されたホテルの一室で、ただじっとしているしかなかった。
今思えば、その時点でミナミノ共和国の首相を見限って、強引にでもルーデュニアに帰るべきだった。
だけど、私はまだ…愚かにも、話し合いの機会が残っていると思ってしまった。
折角ここまで来たのだから、手ぶらで帰る訳にはいかないと。
とにかく、何としてももう一度首相に時間を作ってもらわなければ。
…そう思っていた、矢先のことだった。
首都で、国内の反政府組織がテロを起こした。
その一報を聞いたとき、私は肝を冷やしたものだが。
後で知ったところによると、血の気の多い反政府組織の若者が、政府所有の施設に火炎瓶を投げたとか…。
しかもそれは未遂で、実際は火炎瓶を投げつけようとしたところを、警備員に取り押さえられた。
おまけに、狙われた政府所有の施設は、その時間、警備員以外誰もいない…無人状態だったそうだ。
それなのにミナミノ共和国のメディアは、この事件を大々的に報道した。
まるで大勢の被害者が出たかのように、大きく誇張し。
こんな恐ろしいテロ行為が起きるほど、国内の治安が急速に悪化したとアピールした。
そして、その治安の悪化を口実に…あれよあれよという間に、国境が封鎖されてしまった。
私はミナミノ共和国に閉じ込められたまま、ルーデュニア聖王国に帰ることが出来なくなってしまったのだ。
私にとって、これは青天の霹靂だった。
そして、何よりも恐れていたことでもあった。
そもそも、政権交代したばかりだというミナミノ共和国の首相にだって、ろくに会わせてもらえなかった。
到着した翌日に、ちらりと挨拶を交わしただけだ。
私はてっきり、そこで話し合いの席が用意されていると思っていたのに。
首相はのらりくらりと、「今日は予定が立て込んでいるから、また後日」と言い訳して逃げていった。
後日と言われても、サミットが目前に迫っている状況で、悠長なことはしていられない。
私がそう告げても、へらへら笑いながらのらりくらりと躱すだけ。
挙げ句、「良かったら、ゆっくり観光でもしたらどうですか?」と言い残して、さっさと去っていった。
私は国の代表として、ミナミノ共和国の首相と話をしに来たのであって。
断じて、この国に観光をしに来た訳ではない。
その時点で、私は焦りを感じていた。
まさかミナミノ共和国まで来て、ろくに首相と話し合いも出来ないなんて。
向こうが招待してきたにも関わらず、私は首都に用意されたホテルの一室で、ただじっとしているしかなかった。
今思えば、その時点でミナミノ共和国の首相を見限って、強引にでもルーデュニアに帰るべきだった。
だけど、私はまだ…愚かにも、話し合いの機会が残っていると思ってしまった。
折角ここまで来たのだから、手ぶらで帰る訳にはいかないと。
とにかく、何としてももう一度首相に時間を作ってもらわなければ。
…そう思っていた、矢先のことだった。
首都で、国内の反政府組織がテロを起こした。
その一報を聞いたとき、私は肝を冷やしたものだが。
後で知ったところによると、血の気の多い反政府組織の若者が、政府所有の施設に火炎瓶を投げたとか…。
しかもそれは未遂で、実際は火炎瓶を投げつけようとしたところを、警備員に取り押さえられた。
おまけに、狙われた政府所有の施設は、その時間、警備員以外誰もいない…無人状態だったそうだ。
それなのにミナミノ共和国のメディアは、この事件を大々的に報道した。
まるで大勢の被害者が出たかのように、大きく誇張し。
こんな恐ろしいテロ行為が起きるほど、国内の治安が急速に悪化したとアピールした。
そして、その治安の悪化を口実に…あれよあれよという間に、国境が封鎖されてしまった。
私はミナミノ共和国に閉じ込められたまま、ルーデュニア聖王国に帰ることが出来なくなってしまったのだ。
私にとって、これは青天の霹靂だった。
そして、何よりも恐れていたことでもあった。