神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「…本人達は探すなと言ってるが、まさか放っておく訳にもいかないし…」

ましてや、アーリヤット皇国との情勢が不穏な今。

余計な心配の種は増やしたくない。

「仕方ない…。聖魔騎士団からエリュティアを呼んで、探索魔法で探してもらうか…」

「何だかあの人、いっつも誰かか何かを探してますね」

本当だよ。

いくらエリュティアが、探索魔法のプロだからって。

警察犬じゃないんだぞ。

捜し物の6割くらいは俺達のせいだな。本当申し訳ない。

しかも、今回の「捜し物」は非常に厄介だ。

「マシュリさんは魔物だから、探索魔法には引っ掛からないんだよね?」

「あぁ。ついでに元暗殺者組も…エリュティアが辿れる『痕跡』は、ほとんど残してないだろうからな…」

いくら突然の脱走と言えど、簡単に辿れる「痕跡」は残さない。

その手の隠密行動は、俺やシルナなんかよりずっと得意だ。

いかにエリュティアと言えど、あの二人の居場所を探すのは至難の業。

マシュリほどじゃないだろうが、骨の折れる作業になるだろう。

こんなこと頼むの、本当申し訳ない。

「あの二人…。帰ってきたら、覚えていなさい」

イライラと、こめかみに血管を浮き立たせるイレース。 

全く同感だな。何回言っても、口を酸っぱくして言っても、全然言うこと聞かない。
 
マシュリもマシュリだよ。ここに居ろって何回も言ってるのに、何処行ってんだ?

猫だから、本能的に外に出たくなるのかもしれない。

「帰ってきたら、いよいよファラリスの雄牛の出番ですね」

「あ、あわわわわ…。イレースちゃんが怖い…」

本気でイレースにファラリスされないうちに、さっさと帰ってきた方が身の為だぞ。三人共。
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