神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「…!やっぱり、あの人…」

マシュリもまた、その姿を見て眉をひそめていた。

「ここ最近…突然皇王の傍にあの女が現れたんだ」

…。 

「突然ルーデュニアに攻撃を始めたのは、あの女がきっかけなんじゃないかと思って…。僕はそれを確かめたかったんだ」

…そうなんだ。

マシュリは、ナツキ皇王が突然ルーデュニア聖王国を…フユリ様を罠に嵌めたのは、あの女のせいだと思ってたんだね。

成程。

…それ、多分正解だよ。

「…『八千歳』。あの人…」

「…うん。何でこんなところに…」

『八千歳』も、当然気づいているようだ。

「…?二人共、あの人を知ってるの?」 

と、マシュリが尋ねた。

…知ってるも何も…。

「あの女、懲りずに…今度は、アーリヤット皇国に手を貸したのか」

「…学院長に復讐する為なら、手段は選ばないってことだと思うよ」

「だろーね」

学院長の故郷。イーニシュフェルトの里の族長の孫娘。

かつて、『カタストロフィ』という組織を作って学院長に復讐し、羽久を殺そうとした…。

そして、『アメノミコト』にも手を貸し、情報を流し…。

不死身先生の読心魔法対策を、『八千歳』に指南した、その張本人。

名を、ヴァルシーナ・クルス。

近頃は大人しくしていると思ったら、まさかこんなところにいるとは。

僕が言うのもなんだけど、落ち着きがないにも程がある。

今度はこんなところで、虎視眈々と学院長に復讐する機会を伺っていたのか。

本当…しつこい人だよね。

いい加減諦めれば良いのに、やっぱり諦めきれないらしい。

まさか、あの女が今回の騒動の引き金となっていたとは…。

この事実を知ることが出来ただけでも、僕達がここに来た甲斐があったね。
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