神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…まぁ、でも、有り得ない話じゃないかもな。

お互いの主張がどうしても食い違うなら、最悪武力をもって分からせるしかない。

…そうなったとき、戦うことになるのは…やっぱり、聖魔騎士団の魔導師なんだろう。

ナジュ辺りは、元々生まれ故郷で大魔導戦争やってたらしいから、慣れてそうだけど。

俺は全然駄目だな。想像がつかない。

ルーデュニア聖王国は建国以来、地方の小さな小競り合いを除いて、まともに戦争なんてしたことないもんな。

果たして俺は、まともに軍人なんてなれるのだろうか?

自信がないよ。

「協力してもらえますか、シルナ学院長」

「…」

さすがのシルナも、こればかりは即答を避けた。

戦争になったとき協力してください、と言われたのだから…無理もない。

平和主義のシルナにとって、戦争なんて、全く望まない行為だろう。

まぁ、誰にとってもそうだろうけど。

戦争なんて望むルーデュニア国民は、多分一人もいない。

だけど、この国の女王であるフユリ様が覚悟を決めたのなら…。

そのときは、俺達国民も覚悟を決めなければならないのかもしれないな。

戦うにしても、戦わないにしても、だ。

「…私はいつだって、ルーデュニア聖王国を守る為に手を尽くしてきました」

うんと頷く代わりに、シルナはそう言った。

「そして、それはこれからも変わりません。私が言えるのはそれだけです」

…やっぱり。

シルナも、戦争がしたい訳じゃないんだな。

そうだと思うよ。俺も。

「…ありがとう。それで充分です亅

フユリ様は、シルナを弱腰となじることなく、微笑んで頷いた。

「早速、兄に連絡を取ってみます。何か進展があれば、またシルナ学院長にもお知らせしますね」

「分かりました。…朗報を期待しています」

…と、言ってみたものの。

残念ながら、朗報はしばらく望めそうもなかった。
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