神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
ナジュもイレースもああ言うけど。

ワンチャン予想が外れて、ナツキ様がフユリ様の要請を受けて、話し合いの席についてくれるかもしれない…。

…なんて、淡い期待を抱いていた時期が、俺にもありました。




「…そっか。やっぱり駄目だったんだね」

フユリ様に謁見した翌日。

フユリ様のもとから、学院に使者がやって来た。

その使者が言うことには。

フユリ様は昨日、アーリヤット皇国にあるルーデュニア大使館に、フユリ様から和解の申し出を伝えてくれと頼み。

フユリ様の命令通り、ルーデュニア大使館の人間が、ナツキ様に話し合いの要請を伝えに行った。

が、ナツキ様はルーデュニア大使館の話を聞こうともせず、お払い箱にしたとか。

…話し合いの席を設ける…どころの騒ぎじゃないな。

話すら聞いてもらえない。

「だから、無理だと言ったでしょう」

イレースは不機嫌そうに腕組みして言った。

本当。イレースの言う通りだったな。

「一度では諦めず、何度も請願するつもりだそうだけど…」

「一度駄目だったのに、二度三度と頼んで話を聞いてくれるとでも?煙たがられて、余計聞いてもらえないと思いますけど」

だから、そんなはっきり言うなって。

二度三度と頼んで駄目でも、もしかしたら、四度目は成功するかもしれないじゃないか。

…まぁ、そう都合良くは行かないだろうが。

「にしても、大使館からの使者さえ追い返すとは、随分大胆な真似をしますね。アーリヤット皇王も」

と、ナジュ。

「話も聞かずに門前払い…だもんね。一国の王様の態度じゃないよ…」

天音も続けて、そう言った。

だよなぁ。

敵の戯言に耳を貸すつもりはない!ってか?

せめて、話を聞くくらいはしてくれても良いのにな。

「それに…僕が心配なのは、戦争のことだけじゃないよ」

「え?」

「だって、令月君達やマシュリさん…。まだ帰ってきてないでしょ?」

「…」

…言うなよ、それを。

俺だって心配だけど、忘れてた振りしてたんだから。

正直、アーリヤット皇国とルーデュニア聖王国の未来よりも。

俺にとっては、あいつらの方が心配だよ。

「…何処にいるんだろうな…」

これ以上、もう頭痛の種を増やして欲しくないのだが?
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