神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「よし…。そうと分かれば、こっちもヴァルシーナ対策だ」

警戒すべき相手ではあるが、勝てない相手ではない。

現に俺達は何度も、ヴァルシーナと対峙して、勝利してきた。

だったら、今度も勝つだけのことだ。

「いよいよもって、イーニシュフェルト魔導学院も…無関係ではいられなくなったな」

「…うん、そうだね」

シルナも、苦笑気味に頷いた。

ヴァルシーナが絡んでるなら、確実に学院も狙われるはずだ。

学院って言うか…正しくはシルナだけどな。

放っておいてはくれないだろう。ヴァルシーナなら。

かかってくれば良い。…何度でも。

何度やって来ても、その度に撃退してやるだけのことだ。

「いやー、びっくりしたね。王の間を覗いたら、ヴァルシーナがいるんだからさー」

「あれは、ちょっと予想してなかったよね」

「まさか、ナツキ皇王に付きまとっていたあの女が、学院長の関係者だったとは…。世界って、意外と狭いんだね」

すぐりと令月、それからマシュリが続けて言った。

…ん?

…俺、何か忘れてるような…。

…。

「…ありがとうな、令月、すぐり。それにマシュリも。助かったよ」

「いいよ。そう言ってもらえるなら、わざわざ敵情視察に行ってきた甲斐があるね」

「りんごに埋もれた甲斐もあるってもんたよ。ねー?」

「…僕は、もうあの船には乗りたくないね。鼻が曲がりそうだよ…」

…。

…なぁ、今気づいたんだけど。

…こいつら、何でここにいるの?

「…普通に喋ってましたけど、気づいたの今なんですか?」

ナジュのマジレスも、今ばかりは俺の耳には届いていなかった。
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