神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…やめた方が良いと思うけどなぁ。

ヴァルシーナが関わってるなら、なおのこと…。

「そこまでしてナンセイ民主共和国に行って、本当にヴァルシーナが待ってるとは限らないんだぞ?」

罠だけ仕掛けられてて、本人はいないかも。

いや、あいつはあいつで馬鹿真面目だから。

シルナに手を下すなら、直接自分の手で…と思ってる気がするが。

それは分からないな。今回はヴァルシーナだけじゃなくて、ナツキ様も絡んでるんだろうし…。

あぁ、でも令月達曰く。

ヴァルシーナはナツキ様に助言をしているだけで、仲良く手を取り合って協力している訳じゃないんだっけ?

…駄目だ。やっぱり分からん。

事態がどう転ぶのか、ヴァルシーナやナツキ様が何を考えてるのか…全然読めない。

こんな不安材料しかない状態で、シルナは行くって言うんだな?

命知らずの馬鹿だよ、お前は。

「分かってる。行ってから確かめるよ、それは」

「…」

決意は固そうだな。

…分かった。シルナがそちらを選ぶなら。

「なら、俺も行くよ」

落とし穴に引っ掛かるなら、俺も一緒だ。

もし這い上がれない落とし穴だったとしても、落っこちた穴の中に二人でいるなら。

一人で穴に落っこちるより、遥かにマシだろう。

「…イケメンですね、羽久さん」

「うるせぇ、ナジュ」

そういうつもりで言ったんじゃねーから。

真剣なんだよ、こっちは。真剣。

「羽久…でも、危険なんだよ。危ないんだ。ヴァルシーナちゃんが何考えてるか…」

シルナは何言ってんだ?

「今更だろ」

これまでだって何度も、ヴァルシーナの復讐に付き合わされてきたよ。

今更もう一回付き合わされたからって、それが何だと言うんだ?

一向に構わんね。

「それに、お前を一人で行かせるなんて、俺の中では有り得ないなら」

俺は関係ないと思ってるんだろ。全ては自分の過ちが元凶なのだから、行くのは自分だけで良いって。

シルナの考えてることくらい、手に取るように分かる。

ナジュじゃないが、俺はシルナにだけは読心魔法が使えると言っても過言ではない。

何年一緒にいると思ってるんだ?
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