神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「ジュリス、こっちの味は何?」
 
「あ?それは…ストロベリーだな。ハートストロベリー味だって」

その名の通り、赤やピンクのハート型のチョコチップが散りばめられた、可愛らしいピンク色のアイスクリームだ。

ストロベリーはアイスクリームの定番だよな。

「じゃあ、こっちは?」

「どれどれ…。メルヘンキャラメル味だってさ」

こちらには、キラキラ光るキャラメル味のソースがたっぷりかかっている。

これまた可愛らしい。

「これは?何味?」

「えぇと…フリルリボンホワイトチョコ味だな」

「こっちは?水色だよ」

「何々…?ホップステップロリポップ味だってよ」

「この黄色いのは?」

「キュートプリンアラモード味だ」

「たくさんあるねー」

…なんかさ。

どれもこれも、全部…やけにメルヘンって言うか。

頭弱そうな名前なんだが、それがこの店のコンセプトなんだろうか?

よく見たら、店名も『アイスクリームショップ〜メルヘン・スイート〜』と書いてある。

いかにも甘ったるそうで、シルナ・エインリーは好きそうだな。

店内にいる客は皆女性客ばかりで、男の俺はどうも場違い感が否めない。

違う。俺だって嫌なんだよ。

でも仕方ないだろ。ベリクリーデを一人にしたら、こいつ何しでかすか分からないし。

「ご注文お決まりですか?」 

ピンクのリボン付きエプロンを着た若い女性店員が、にっこりと笑って注文を聞いてきた。

「表に飾ってあった、おっきいアイスが欲しいな」

ベリクリーデ。無茶振りはやめろ。

あれはただの置き物だ。

きっと店員さんも戸惑って、困ったような顔をするものだと思ってたら。

「申し訳ありません、お客様。当店のアイスクリームは、コーンに乗せると5段までが限度でして…」

普通にマジレスしてきたので、この店員さんは意外と肝が太い。

そういう問題なのか?

「レインボー7段重ねは無理なの?」

「残念ながら…」

「そっかぁ。じゃあ、うーんと…。こっちの白いのと、黒いのと、赤いのとー」

色で言うな。名前で言えよ。

しかし店員はにこにこ笑って、

「バニラ、ミルクチョコ、ストロベリーですね」

と言って、ベリクリーデのアバウトな注文をちゃんと取ってくれていた。

ありがとう。ごめんなベリクリーデがアホで。

「それから、この緑のと…黒いぷちぷちのにする」

「抹茶とチョコチップですね。トッピングは如何しますか?」

「全部」

「畏まりましたー」

おい。全部って何だよ。

お前、もうちょっと物を考えて注文したらどうだ?
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