神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
まぁ、あれだな。

ベリクリーデに一般常識的なものを求めた、俺が馬鹿だった。

好きにさせよう。

こいつがこれまで、散々俺の手を煩わせてきた悪ふざけに比べたら。

仕事終わりのアイスクリームくらい、可愛いもんだよ。

メルヘンスイートだけにな。

しかし、俺も他人事ではいられなかった。

何故なら。

店員さんは、にこにこ笑いながらこちらを向いた。

「彼氏さんのご注文は?」

「は?」

思わず、素の声が出てしまった。

彼氏?誰?

…まさか、俺のことじゃないよな?

「…ちょ、待てよ。誰がこいつの彼氏、」

「ジュリスはねー、こっちのピンクの奴を五つ」

ベリクリーデも勝手に何言ってんの?

「畏まりました〜。彼氏さんはこちらの、パーフェクトピンクラブリー味を五つですね」

この店員さんも何言ってんの?

何?その頭悪そうな名前のフレーバー。

俺は食べないから。つーかベリクリーデの彼氏じゃないから。

百歩譲って俺もアイスクリーム食べるにしても、そんな甘ったるそうなフレーバーは御免だ。

しかも、5段も要らねぇ。

「ちょ、まっ…。勝手に、」

と、俺は言いかけたが。

「大丈夫ですよ!男性の方でも注文される方、結構多いですから!」

店員さんは、満面の笑顔で謎のフォロー。

違う。可愛い注文が恥ずかしかった訳じゃない。

ベリクリーデと話が噛み合わないのはいつものことだが、この店員さんとも全然噛み合わない。

結果。

「お待たせしました!こちらが彼女さんのご注文で…」

「ありがとー」

「はいっ、こちらは彼氏さんのご注文です。サービスで、ハートチョコチップをトッピングしておきました!」

「…どうも…」

ハート型のカラフルなチョコチップが、たっぷりとトッピングされた、

ピンク色のフレーバー5段重ねアイスを、強引に押し付けられてしまった。

…何なの?これ。

何で俺がこんな目に?

「またのご来店をお待ちしております!」

もう二度とご来店しないからな。畜生。

「ジュリス、外に出て食べよ」

「…分かったよ…」

言いたいことは山ほどあるし、納得出来ないことも山ほどあるが。

食べ物を無駄にする趣味はないからな。
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