神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
…とは、思ってみたものの。

「うはぁ、あまっ…」

一口食べてから、その甘ったるさに思わず辟易した。

せめてベリクリーデみたいに、色んなフレーバーを5段重重ねてくれるなら、味変出来て気分も変わるんだろうが。

何でよりによって、同じフレーバーを五つなんだ?

俺、めちゃくちゃパーフェクトピンクラブリー味が好きな人、みたいになってるじゃん。

別に好きじゃねーから。つーか甘い。

歯が溶けるんじゃないかという甘さ。

これ、シルナ・エインリーは好きだろうな…。

…でも、アイスクリームに罪はないから。食べ物を無駄にしたくもないし。

我慢して食べるよ。

「ぺろぺろ。美味しいね、ジュリス。これ。ぺろぺろ」

俺にこのような苦行を強いたベリクリーデは、てっぺんのバニラアイスをひたすら舐めていた。

ベリクリーデは、アイスクリームは舐める派なのか?

別に好きにすれば良いけど…。そのペースだと、一番下のチョコ味に辿り着く頃には、全部溶けてるんじゃないのか?

俺はアイスクリーム、普通に齧って食べる派なんだが。

今回は小さいスプーンをもらったから、そのスプーンで掬って食べてる。

こればかりは、その人の食べ方によるよな…。

「ジュリス、それ美味しい?」

一心不乱にバニラアイスを舐めていたかと思ったら、ベリクリーデがくるりとこちらを向いた。

どうでも良いけど、バニラアイスを舐めてるせいで、ベリクリーデの舌が真っ白。

「あ?これ?」

「そのピンクの奴。ジュリス好きかなーと思って」

何故そう思った?

「まぁ…不味くはないけど、甘いな…」

「私も味見するー」

「あ、こら」

ベリクリーデは身を乗り出してきて、俺のパーフェクトピンクラブリー味のアイスを一口舐めた。

お前…お行儀悪いぞ。

俺のを食べたかったら食べても良いけど、人のものを食べるときはスプーン使えよ。

「うん、美味しい」

「…そりゃ良かったな」

「やっぱりジュリスのは、それにして良かったー」

何故そう思った?

「…あのな、ベリクリーデ。俺は別に今更気にしないけど、人の分を一口もらうときは、直接口をつけるんじゃなくて…」

「ジュリス、私のも甘くて美味しいよ。はい、あげる」

「ちょ、やめろコラ。無理矢理口に押し込んでくるな」

もらわないから。もらうにしてもスプーンで掬うから。

強引に押し付けられたベリクリーデのバニラアイスを、とりあえず一口もらってみると。

意外と甘ったるくはなくて、パーフェクトピンクラブリー一色だった口の中がちょっとリセットされた。

このパーフェクトピンクが甘過ぎるんだよ。

果たして俺は、これを五つ食べ切れるのだろうか…?
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