神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
15分後。

「はー…。やっと食べた…」

やりきった。食べきったぞ俺は。

パーフェクトピンクラブリーアイスを、パーフェクトに制覇した。

捨てるのは勿体ないからと、我慢して全部食べたけど…。

正直、もう二度と食べたくない味だ。

一生分食べたよ、これ。

「はぁ、口の中が痺れる…」

冷たいものを一気に食べたせいだな。

今は無性に、熱い煎茶が飲みたい気分だ。

特に最後の方は、アイスが徐々に溶け始めてしまって。

急いで食べたもんだから、余計に口の中が冷たい。

しかも、アイスクリームでよくある、コーンの最後の方はスカスカ…なんてことは全然なくて。
 
コーンの底の方まで、たっぷりとアイスクリームが詰まっていた。

それは嬉しいサービスなんだけど、今回ばかりはスカスカコーンであって欲しかったな。

…やれやれ。

何はともあれ食べきったのだから、これで良し…。

「ベリクリーデ、そろそろ帰…って、何やってんだお前?」

「?アイス食べてる」

「…」

今のベリクリーデの状況を一言で表すなら、惨状と言ったところか。

ベリクリーデは頑なに、アイスを齧らずに舐め続けていたらしく。

未だに、二段目の抹茶アイスをぺろぺろしていた。

その間に、三段目以降のアイスが溶けて、コーンから溢れてしまっている。

溶けたアイスが、ベリクリーデの袖口やら口元やら手のひらに、べたべたくっついていた。

何なら足元まで、水滴のように溶けたアイスがポトポト落ちている始末。

あーあー、もう…。…今日日、幼稚園児でももうちょっと上手に食べるぞ。

無視して帰りたいところだったが、そうも行かず。

「あのな、お前…齧って食べろよ。溶けまくってるじゃないか」

「だって、アイスは舐めるものなんじゃないの?」

「一個二個なら舐めても良いけど、5段もあるんだから、齧らないと減らないだろ」

「そっかー」

何で今納得してんの?もっと早く気づけよ。

それに気づけないのが、ベリクリーデクオリティ。

俺はハンカチを取り出して、あちこちくっついている溶けたアイスを拭った。

「ほら、拭いてやるから。早く食べろ」

「うん。でもこの緑の奴、あんまり美味しくなくて」

抹茶味か?

「抹茶嫌いなのか?」

「なんか、口の中がわさびびのある味みたいになる」

「…わびさび、な。わびさび」 

ワサビ入りじゃねーから。適当言うな。

「それじゃあ何で、抹茶味注文したんだ…?」

「緑色で綺麗だったから」

そんなことだろうと思ったよ。ベリクリーデのことだから。
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