神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「…最後通牒…ですか」

「内容はまず、ルーデュニア聖王国に囚われている二人の外交大使の即時返還…」

うるせぇ。それは建前だろ。

ルディシアもマシュリも、外交大使なんかじゃない。

ナツキ様は、本気で二人に帰ってきて欲しい訳じゃない。

ただ建前として、二人がルーデュニア聖王国に囚われていることになっているから、二人の身柄を返せと言ってるだけ。

返せ返せと言いながら、本当に帰ってきたら、理由をつけて闇に葬るつもりでいるんだろう。

そうはさせるものか。

「そして、ナツキ皇王陛下がサミットで草案を提出した、世界魔導師保護条約の批准を求めます」

…こっちが本命だな。

ルーデュニア聖王国に、あのくそったれ条約の批准を求める。

そうすることによって、ルーデュニア聖王国の魔導師を条約に縛り付けようとしているのだ。

…勿論、その魔導師の中には、俺とシルナも含まれる。

「その他には、この度の騒動でアーリヤット皇国が被った損害の賠償を求めます」

つまり、金を寄越せと?

アーリヤット皇国が被った損害?何の冗談だ?

損害を被ったのはこっちだよ。

どうやら、ルーデュニア聖王国からありとあらゆるものを搾り取るつもりらしいな。

がめついにも程がある。

「それ以外の詳細な項目に向いては、そちらの封書に記してあります。ご自分の目で確認してくだい」

「…」

フユリ様は、相変わらず険しい顔で白い封筒を睨み付け。

そして。

彼女は無言で、その封筒を真っ二つに破り捨てた。
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