神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
で、散々煽りに煽って、ハクロの反応はと言うと。

「…よくも…。皇王陛下を侮辱しましたね」

案の定、ブチギレ状態。

当たり前だよ。

それなのに、シルナは涼しい顔。

「侮辱?私は事実を言っただけだよ」

「あなたに何の権限があって、そのようなことを…」

「やれやれ、困ったものだね。アーリヤット皇国も…。身の程を知らない連中の相手をするのは疲れるよ。チョコでも食べて、大人しく部屋の中に引きこもってれば良いのに」

それはお前だろ?

「…まぁ良いや。言って聞かせて分からないなら、その身に教えてあげるよ」

…その身に?って…どういう意味だ?

やっぱり、本気でアーリヤット皇国と開戦を、

「とはいえ、一方的に殴りかかって、罪のないアーリヤット皇国の国民を傷つけるのは忍びない。ここは紳士的な戦争をしようじゃないか」

と、シルナは提案した。

「…紳士的な戦争?」

ハクロは、ジロッとシルナを睨んだ。

俺も分かんない。何言ってんだ?シルナの奴。

「そして同時に、現状全く勝ち目のない君達に、僅かでも勝機を与えてあげるよ。どうかな?」

「分かるように説明してください」

俺も聞きたい。

「戦争じゃなくて、決闘を行うんだよ。正々堂々とね」

と、シルナは名案みたいな顔をして言った。

…決闘…。…って?

これには、俺もフユリ様も、ついでにハクロも首を傾げていた。

それが紳士的な戦争…?

「お互い代表者を数名決めて、その者同士で決闘を行う。決闘に勝った国が戦争に勝利したとみなし、負けた方はその時点で無条件降伏。どう?無駄な血が流れなくて良いでしょ?」

…成程、と思ってしまった。

戦争じゃなくて決闘…そういう意味だったのか。

確かにそれなら…無関係な国民を巻き込まずに済む。

無駄な血が流れずに済むのだ。

シルナが散々ハクロを煽りまくっていたのは、この提案を呑ませる為だったのか。

ようやく理解した。

「決闘の勝利条件は…そうだな、相手を『戦闘不能』にすること、かな」

戦闘不能…。

つまり、戦闘不能状態にさえすれば、相手の命を奪う必要はないということだ。

あくまでもシルナは、この戦争…もとい決闘で、誰の命も奪うつもりはない。

…まぁ、向こうにそんな紳士的な考えを期待するのは、さすがに望み過ぎだが。
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