神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「…」
ハクロは黙って、シルナをじっと見つめていた。
…果たして、ハクロはこの提案を呑むだろうか?
…呑んでもらわなきゃ困るんだが。
「さぁ、どうかな?ナツキ皇王陛下は『とっても賢い方』らしいから、どういう選択をするのが正しいか、分かってくれると思うけど」
嫌味を言うなって。
そんなこと言われたら、余計ハクロが苛立って、シルナの提案を断るかもしれない。
「それとも、何?自信がないの?決闘なんかしたら負けるって?」
煽り散らしていくスタイル。
もう良い。シルナに任せるよ。
「負けるのが怖い癖に、そんな相手と戦争しようなんてよく思えたね」
「…負けるのが怖いのは、あなたなんじゃないですか?そうやって、開戦を遅らせて時間稼ぎをしようとしてるだけでは?」
魂胆がバレ始めてるんだけど、本当に大丈夫だろうか。
そうだよな。ちょっと冷静になれば分かる。
決闘なんて、シルナが苦し紛れに出した提案だってことくらい。
俺でさえ分かるのに、いくら煽られて頭に血が上っていようとも、ハクロにだって分からないはずがない。
…しかし…。
「そう思うなら、今すぐ戦争する?宣戦布告もなしに他国の領海に入り込んで、不意打ちで奇襲攻撃…なんて、卑怯な手口を使わないと勝てないのは、そっちの方でしょう?」
涼しい顔をして、小馬鹿にしてみせた。
いつもは猫の額ほども度胸のないシルナが、今日はまるで別人だな。
人は見かけによらないって、あれはその通りなんだな。
まぁ、元々…やる時はやる奴だから、シルナって。
これまでもこれからも、こうやってルーデュニア聖王国の危機を救うんだろうな。
「何より、君は単なる一部隊の将に過ぎない。君に決定権はないはずだよ」
「…」
「アーリヤット皇国に帰って、ナツキ様に指示を仰がなきゃならないはずだ。聞いておいでよ、君のご主人様に。私の提案を受けるか断るか」
痛いところを突いてきたな。
「それでもし、ナツキ様が身の程知らずにも私の提案を断ったら、その時は好きにしたら良い。港を砲撃したいならどうぞ」
どうぞ、ではないだろ。
港に駐留している軍隊は帰ってもらえよ。
「賢い皇王様がどんな選択をするか…。期待してるよ」
シルナはそう言って、不敵に微笑んでみせた。
「…分かりました。皇王陛下にお伝えします」
逆ギレして、今すぐ総攻撃の命令を出したらどうしようと不安だったが。
幸い、ハクロは俺より余程冷静だった。
彼女はその場を辞し、ナツキ様にこの事を伝える為、一時的にアーリヤット皇国に帰っていったのだった。
ハクロは黙って、シルナをじっと見つめていた。
…果たして、ハクロはこの提案を呑むだろうか?
…呑んでもらわなきゃ困るんだが。
「さぁ、どうかな?ナツキ皇王陛下は『とっても賢い方』らしいから、どういう選択をするのが正しいか、分かってくれると思うけど」
嫌味を言うなって。
そんなこと言われたら、余計ハクロが苛立って、シルナの提案を断るかもしれない。
「それとも、何?自信がないの?決闘なんかしたら負けるって?」
煽り散らしていくスタイル。
もう良い。シルナに任せるよ。
「負けるのが怖い癖に、そんな相手と戦争しようなんてよく思えたね」
「…負けるのが怖いのは、あなたなんじゃないですか?そうやって、開戦を遅らせて時間稼ぎをしようとしてるだけでは?」
魂胆がバレ始めてるんだけど、本当に大丈夫だろうか。
そうだよな。ちょっと冷静になれば分かる。
決闘なんて、シルナが苦し紛れに出した提案だってことくらい。
俺でさえ分かるのに、いくら煽られて頭に血が上っていようとも、ハクロにだって分からないはずがない。
…しかし…。
「そう思うなら、今すぐ戦争する?宣戦布告もなしに他国の領海に入り込んで、不意打ちで奇襲攻撃…なんて、卑怯な手口を使わないと勝てないのは、そっちの方でしょう?」
涼しい顔をして、小馬鹿にしてみせた。
いつもは猫の額ほども度胸のないシルナが、今日はまるで別人だな。
人は見かけによらないって、あれはその通りなんだな。
まぁ、元々…やる時はやる奴だから、シルナって。
これまでもこれからも、こうやってルーデュニア聖王国の危機を救うんだろうな。
「何より、君は単なる一部隊の将に過ぎない。君に決定権はないはずだよ」
「…」
「アーリヤット皇国に帰って、ナツキ様に指示を仰がなきゃならないはずだ。聞いておいでよ、君のご主人様に。私の提案を受けるか断るか」
痛いところを突いてきたな。
「それでもし、ナツキ様が身の程知らずにも私の提案を断ったら、その時は好きにしたら良い。港を砲撃したいならどうぞ」
どうぞ、ではないだろ。
港に駐留している軍隊は帰ってもらえよ。
「賢い皇王様がどんな選択をするか…。期待してるよ」
シルナはそう言って、不敵に微笑んでみせた。
「…分かりました。皇王陛下にお伝えします」
逆ギレして、今すぐ総攻撃の命令を出したらどうしようと不安だったが。
幸い、ハクロは俺より余程冷静だった。
彼女はその場を辞し、ナツキ様にこの事を伝える為、一時的にアーリヤット皇国に帰っていったのだった。