神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
それでも、ナジュはあまり顔色が冴えなかった。

「そう上手く行くとは思えませんけどね…」

「及び腰だな、ナジュ」

お前にしては、珍しい。

それとも、決闘に勝つ自信がないか?

「いや…。だから、さっきから言ってるじゃないですか。勝ち負けの問題じゃなくて」

「なら、どういう問題だよ?」

「決闘、こっちはやる気満々で結構なことですけど…。…決闘なんか誰がするか、って普通に大砲撃ってきたらどうするんですか?」

「…」

俺もシルナもフユリ様も、意表を突かれたように、互いに顔を見合わせた。

…なんか、もう決闘が決まったような感覚だったよ。

そういや、まだナツキ様の了解を得られてないんだった…。

「そうか…。ナツキ様が断ったら…」

「う、うーん…。断らないで欲しいなぁ…とは思うけど…」

「こ、こればかりは…兄上の意志次第でしょうね…」

あの人がどのような判断を下すか、だよな。

シルナからの提案なんて、絶対裏があると読んでるだろうし…。

俺達はナツキ様の誘いを断ったのに、ナツキ様がシルナの誘いを受ける道理はない…ように思える。

最後通牒だって破り捨てた訳だし。

決闘?そんなの知るか、の一言で終わりだもんな。

で、港に残っているアーリヤット国軍に、一言命令すれば良い。

「全軍、攻撃を開始せよ」って。

面倒な決闘なんて、付き合ってやる義理はないのだ。

そう思うと…非常に不安になる。
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