神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
――――――…その頃、ルーデュニア聖王国、イーニシュフェルト魔導学院では。





「…そういう訳で、決闘することになっちゃった」

「…」

学院の教師陣(+元暗殺者二人)と、それから聖魔騎士団から、シュニィにも来てもらって。

港が包囲されたこと、ジュリスとベリクリーデがそれに対処したこと。

フユリ様のもとに、ナツキ様から最後通牒が届けられて…それを破り捨てたこと。

そして、ナツキ様の使者であるハクロに、シルナが決闘の申し入れをしたこと…等々。

今日起きたことの全てを、皆に話して聞かせた。

…改めて振り返ってみると、怒涛の一日だったな。

ルーデュニア聖王国にとっては、大きな歴史の転換点になる日になったのかもしれない。

まさか、自分がそんな重大な局面の当事者になるとは。

人生って分からないもんだな。

神の器であるお前が言うか、って感じだが…。

それはさておき。

「…」

皆はこの報告を受けて、何を思っているのか。

誰もが無言であった。

「…え、えーっと…」

困り果てたシルナは、右を向き、左を向き、せわしなく視線を彷徨わせてから…。

「…その、ごめん…」

何故か謝罪した。

…何で謝るんだよ、お前が。

「…謝るくらいなら、このような大それた決定はしないことです」

イレースが、ジロッとシルナを睨みつけた。

「これが最善と思って決めたことなら、もっと堂々としていなさい。情けない」

「ひぇっ…。ご、ごめんなさい…」

これでも、ハクロの前では堂々としてたんだよ。

仲間内に帰ると途端にこれだから、シルナなりに甘えてんのかもしれない。

「決闘…か。即時開戦を避けられたのは良かったけど、難しいことになったね…」

「まぁ、向こうが決闘を引き受けてくれる保証はありませんけどね。今すぐにでも攻撃してくるかも」

天音とナジュが言った。

「港にはジュリスさんとベリクリーデさんが待機しています。念の為に、周辺住民の避難も完了しています」

と、シュニィ。

それなら、いきなり港を爆撃されても、人的被害が出る恐れはないな。

…物的被害なら出しても良い、とは一言も言ってないが。

撃たないでいてくれるなら、それが一番に決まっている。

一生撃つなよ。何ならそのまま帰ってくれ。

港で待機している二人は、いつ撃ってくるかと気が気じゃないだろうに。

「ふーん。良いじゃん、決闘。それで済むならかわいーもんだよ」

「一対一で殴り合って決める…。泥沼の戦争するより、余程潔いよね」

元暗殺者組のすぐりと令月は、意外にも決闘に賛成派だった。
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