神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
そして。

「ナジュ君にだけ責任は負わせないよ。僕も戦う覚悟はある」

天音が、珍しく真剣な顔をしてそう言った。

天音まで…。

「僕はルーデュニア聖王国の生まれじゃないけど、ナジュ君の…友達の為なら、どんな重い責任でも背負うよ」

なんて頼もしい言葉だ。

しかし…残念ながら天音は…。

「…気持ちは嬉しいけど、天音は回復魔法専門だろう?戦うのは…」

「あ、いや…それは…」

俺の指摘に、天音は口ごもりかけたが。

ナジュがすかさず、横から口を挟んだ。

「大丈夫です。天音さんはいざとなったらトゥルーフォームに変身しますから。真の姿になった天音さんなら、どんな敵でも木っ端微塵…」

「ちょ、ナジュ君ちがっ…。…まぁ、違わないけど…」

「…??」

よく分かんないんだけど…。

とにかく、天音も決闘に立候補してくれていることは確かだ。

更に。

「『八千歳』、どうする?」

「え、わざわざそれ聞く?」

「そうだね。愚問だね」

令月とすぐりが、いつも通りのあっけらかんとした口調で。

「僕達もルーデュニア聖王国の出身じゃないけど、覚悟はあるよ」

「ナジュせんせーと同じで、俺達も人殺しの罪なら負ってるからね。今更躊躇うことなんて何もないよ」

「…お前ら…」

こんな子供達でさえ、覚悟を決めてるっていうのに。

そして。

「子供は黙っていなさい。私の完璧な授業計画を邪魔した不埒な輩に、そろそろ我慢ならなくなっていたところです」

腕組みしたイレースが、憮然としてそう言った。

「良い機会です。脳天に雷を叩き落として、憂さ晴らしするとしましょう」

「…イレース…」

…お前くらいのもんだよ。憂さ晴らしの為に決闘に参加しようなんて言い出すのは。

頼もしいんだが、そんな超個人的な理由で脳天に雷を落とされる、対戦相手が気の毒でならない。

「…」

…皆、俺なんかよりずっと頼もしい奴らばっかりだ。

それなのに俺は、怯えて腰が引けて、そんな責任は背負いたくないなんて、情けないこと言って逃げようとして。

自分の臆病さが嫌になる。

皆が覚悟を決めてるなら、俺も決めないとな。

国の命運を背負う覚悟を。

「…俺も行けるよ、シルナ」

「…羽久…」

もう逃げない。ルーデュニア聖王国を守る為に、俺も命を懸けるよ。

決闘でも何でも、受けて立ってやる。
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