神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
ここにいる誰もが、国の命運を背負って立つ覚悟が出来ている。

なんと頼もしい味方であることか。

「…ありがとう、皆。ごめんね、私が勝手に言い出したことなのに」

シルナが言った。

何を今更。

これまで散々巻き込まれて、ずっと一緒に乗り越えてきたのだ。

この期に及んで、臆する者はいない。

「でもね、シュニィちゃん…。君は決闘には出せないよ」

と、シルナはシュニィに向かって、首を横に振った。

…言うと思った。

ってか、シルナが言わなかったら俺が言おうと思ってた。

「えっ…」

えっ、じゃなくて。

「君の実力を疑ってるんじゃないよ。だけど、シュニィちゃんにもしものことがあったら、私達以上に…シュニィちゃんの家族が悲しむから」

「…それは…」

シュニィの実力は、俺達とてよく分かっている。

それを疑うつもりはない。けど…。

シュニィに万が一があったとき、幼くして母親を失うことになる、シュニィの子供達が可哀想だ。

何度も言ってるだろう?

シュニィはここにいる誰よりも、自分の命を大切にしなきゃならないんだ。

「それに、万が一決闘で負けた後…この国を、聖魔騎士団をまとめる為に、シュニィちゃんは必要だよ」

その通り。

勿論アトラスだっているけれど、あいつはシュニィと違って、頭脳派ではないからな。

聖魔騎士団のブレーンとして、シュニィは絶対に必要だ。

そして、同じ理由で。

「イレースちゃんもだよ」

「…何です」

イレースは眉をひそめ、シルナを睨んだ。

その目はこわいけども。

「イーニシュフェルト魔導学院には、君が必要だから。残ってもらわなきゃ困るんだ」

「…ふん」

もし俺やシルナに何かあっても、イレースさえ残っていてくれれば。

イーニシュフェルト魔導学院は、魔導学院としての体を成すだろう。

「イレースちゃんはここで、学院を守ってくれないかな」

「私に任せるのは結構ですが、あなた方が無責任に学院からいなくなったら、私の一存で、イーニシュフェルト魔導学院を第二のラミッドフルスにしますからね」

「うぐっ…。ぜ、絶対に帰ってくるよ…」

脅しの怖さが尋常じゃない。

イレースなら、マジでやりかねないぞ。

シルナがいなくなるや否や、イーニシュフェルト魔導学院は、第二のラミッドフルス魔導学院へと変貌することだろう。

生徒達が気の毒だよ。
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