神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「候補者は十人か…。でも、実際に決闘に出られるのは、その中の三人だけなんだよね」

「しかも二本先取だから、どちらかの国が連勝したら、二人だけで終わるね」

そうなるな。
 
理想は、ルーデュニア聖王国側の二人が連勝して、そのまま決闘終了。

是非ともそうなって欲しいが、果たしてそう上手く行くだろうか。

「十人のうち、誰が選ばれるのかはナツキ様が決めるとして…。誰が選ばれても良いように、慎重に十人を決めないとな…」

さて、誰を選んだものか。

「敵の意表を突いた人選が良いよねー。こっちの手の内はバレてるんだから」

「となると、不死身先生は駄目だね。不死身なことも心が読めることもバレてるから」

すぐりと令月が言った。

ナジュもそうだけど、俺とシルナも大概だよな。

これまで、何回もヴァルシーナと対戦してきた。

俺達が代表者に立候補したとしても、対戦者に選ばれる可能性は低い気がする。

逆に、対戦者に選ばれる可能性が高いのは…。

「やっぱり、ここは天音さんの出番なのでは?」

と、提案するナジュ。

やけに天音を推してくるな。

「何で天音…?」

「だって、奴ら、トゥルーフォームの天音さんを知りませんからね。回復魔法しか使えないと思って指名したら、真の力を解放した天音さんにこてんぱんに…」

「あ、あぁぁ、ちょ、ナジュ君!そこまで、そこまで!」

「もごもごもご」

天音に口を塞がれていた。

…何やってんだ?トゥルーフォーム…?

「…それはまぁ、さておき…。誰を選ぶ?」

「こうなっては、学院を任せたいから…とかいう甘っちょろい言い訳は通用しませんよ。少しでも勝ち目のある人間を選ぶべきです」

イレースが、シルナをジロッと見ながら言った。

「…うーん…。…それでも私は、イレースちゃんには代表になって欲しくないな…」

苦笑いで答えるシルナである。

…俺も同感だな。

少なくとも、イレースと、令月とすぐりと、シュニィは選びたくない。

命に貴賤はないけれど、万が一のことがあったとき、後を託せる人物は残しておきたい。

「なら、誰を選ぶんです。贅沢を言っていられる余裕はないでしょう」

「…そうだね…」

シルナはしばし考え、そして。

引き出しから、紙とペンを取り出した。
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