神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
逃げ回る一方だった戦況が動き始めたのは、決闘か始まってから10分程経った頃。

「…はぁ…はぁ…」

さすがのベリクリーデも、息が上がってきた。

肩で息をしているのが、こちらで見ていても分かる。

よく頑張ったものだ。10分間も。

ただ避けているだけとは言っても、一撃当たっただけでも致命傷を負いかねない、あの攻撃を。

全く掠りもせずに、ひたすら避け続けるなんて。

どれほどの集中力と体力と俊敏性があったら、そんな芸当が出来るのか。

それを10分間も続けるなんて、最早人間業ではない。

…だが、これ以上続けるのはキツいぞ。

このままじゃジリ貧だ。

ベリクリーデとバニシンでは、体力の差が段違い。

ベリクリーデの体力は底を突きかけているのに、バニシンはまだまだ余裕綽々のご様子。

魔力量なら、ベリクリーデが勝ってるんだけど…。

「何だ?ちょっと疲れてきたんじゃないか?」

肩で息をするベリクリーデを見て、バニシンはにやにやしながら尋ねた。

「そろそろ追いかけっこは飽きたぞ。かかってこいよ、ほら」

わざとらしく両手を広げて、ベリクリーデを挑発。

ムカつく野郎だ。

「お前の力を見せてみろよ。それとも…このまま潰されてみるか?」

「…」

「それも良いかもなぁ。まずは逃げられないように、脚から潰そう。それから腕をぐっちゃぐちゃに潰して…」

「…」

「あぁ、その可愛いお顔は、最後まで残しておいてやるよ…。…みっともなく命乞いしてもらわないと、面白くないからなぁ!」

…この、悪趣味野郎。

思わず、傍で見ている俺の方が逆ギレしそうになったが。

「…そうだね、逃げ回ってるだけじゃ駄目そうだ」

この決闘が始まって、初めて。

ベリクリーデが、口を開いた。
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