神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
これじゃあもう、右手はほとんど使い物にならない。
私が右手に持っていた星辰剣の短剣は、柄の部分が歪んで、競技場の床に突き刺さっていた。
しかし、左手の長剣はまだ、私の左手にあった。
あれだけ派手に吹き飛ばされたのに、剣から手を離さなかったのは、我ながら見上げたものだと思う。
…右手はもう、ろくに使えない。痛みに耐えるだけで精一杯だ。
果たして、左手一本だけで、何とか状況を打開出来るだろうか?
どうやら、この期に及んでも、ベリクリーデは目を覚ます様子はない。
相変わらず、深く眠ったままだ。
同じ身体を共有している以上、彼女も同じ痛みを感じているはずなんだけど…。
…信じてくれてるのかな。私なら何とか出来るって。
「はぁ、はぁっ…。くそ、今のは効いたぜ…」
バニシンは獣のような顔をして、私を睨み付けた。
効いたと言うなら、そのまま意識を失ってくれれば良かったんだけど。
それどころか。
「お前、意外と骨があるんじゃねぇか…。よぅし、もう容赦しねぇ」
ぺろりと舌舐めずりをして、バニシンは巨斧を構え直した。
やっぱり、まだやる気か。
そうだよね。
しかも、さっきまでは容赦してやってたみたいな言い方。
「さぁ、勝負はまだ始まったばかりだろ?さっさと続きをやろうぜ」
「…」
…この、獣め。
息を整える暇もなく、再び仕切り直し。
すると。
「審判っ…!もう止めてくれ!」
観客席から、顔を真っ青にした羽久・グラスフィアがそう叫んだ。
…羽久、君って人は。
「ベリクリーデはこれ以上戦えない。見たら分かるだろ!?」
羽久は必死に、審判のマミナ・ミニアルに訴えた。
これ以上この決闘が続けば、私が命を落とすかもしれない。
そう心配して、審判に決闘をやめさせるように頼んでいるのだ。
…ありがとうね、気遣いは有り難いんだけど。
「心配ないよ」
私は、口元の血を拭いながら言った。
確かに、さっき危うく意識を失いかけたけど。
まだやれる。まだ戦える。
国の命運を懸けた戦いに、ギブアップで敗北するような真似をしたら、私は自分のプライドが許さないよ。
最後まで戦い抜くよ。ちゃんと…「戦闘不能」になるまで。
私が本当に戦えなくなれば、あの子が出てきて、代わりに戦ってくれるかもしれないし。
諦めるのはまだ早い。
私が右手に持っていた星辰剣の短剣は、柄の部分が歪んで、競技場の床に突き刺さっていた。
しかし、左手の長剣はまだ、私の左手にあった。
あれだけ派手に吹き飛ばされたのに、剣から手を離さなかったのは、我ながら見上げたものだと思う。
…右手はもう、ろくに使えない。痛みに耐えるだけで精一杯だ。
果たして、左手一本だけで、何とか状況を打開出来るだろうか?
どうやら、この期に及んでも、ベリクリーデは目を覚ます様子はない。
相変わらず、深く眠ったままだ。
同じ身体を共有している以上、彼女も同じ痛みを感じているはずなんだけど…。
…信じてくれてるのかな。私なら何とか出来るって。
「はぁ、はぁっ…。くそ、今のは効いたぜ…」
バニシンは獣のような顔をして、私を睨み付けた。
効いたと言うなら、そのまま意識を失ってくれれば良かったんだけど。
それどころか。
「お前、意外と骨があるんじゃねぇか…。よぅし、もう容赦しねぇ」
ぺろりと舌舐めずりをして、バニシンは巨斧を構え直した。
やっぱり、まだやる気か。
そうだよね。
しかも、さっきまでは容赦してやってたみたいな言い方。
「さぁ、勝負はまだ始まったばかりだろ?さっさと続きをやろうぜ」
「…」
…この、獣め。
息を整える暇もなく、再び仕切り直し。
すると。
「審判っ…!もう止めてくれ!」
観客席から、顔を真っ青にした羽久・グラスフィアがそう叫んだ。
…羽久、君って人は。
「ベリクリーデはこれ以上戦えない。見たら分かるだろ!?」
羽久は必死に、審判のマミナ・ミニアルに訴えた。
これ以上この決闘が続けば、私が命を落とすかもしれない。
そう心配して、審判に決闘をやめさせるように頼んでいるのだ。
…ありがとうね、気遣いは有り難いんだけど。
「心配ないよ」
私は、口元の血を拭いながら言った。
確かに、さっき危うく意識を失いかけたけど。
まだやれる。まだ戦える。
国の命運を懸けた戦いに、ギブアップで敗北するような真似をしたら、私は自分のプライドが許さないよ。
最後まで戦い抜くよ。ちゃんと…「戦闘不能」になるまで。
私が本当に戦えなくなれば、あの子が出てきて、代わりに戦ってくれるかもしれないし。
諦めるのはまだ早い。